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ベルリンのアーティストの居住空間。1910年代に建てられたフラットを社交場に

旧西ベルリン、シェーネベルクは東西統一前からデヴィッド・ボウイやヴィム・ヴェンダースも住んでいた芸術家やクリエイターに人気のエリア。戦前から残る装飾やスタイルが再び高く評価されているこの地区のアルトバウに住むアーティストを訪ねた。

Photo: Rie Sawara-Cermann / Text: Yumiko Urae / Edit: Kazumi Yamamoto

ロシア現代アートの生き証人の社交場、「モスクワ・コンセプチャリズム」の館。

ヴァディムとマリアは長い間、拠点としていたケルンから2010年にベルリンに引っ越してきた。ドイツ国内のアートシーンは90年代に旧西ドイツのケルンからベルリンに移ったこともあり、2人は環境を変えたかったという。

「ベルリンは民主主義が生きている。ヨーロッパ内ではいま一番素晴らしい都市だと思うね。この町には良いアーティストがたくさんいるし」とヴァディム。

1911年頃に建てられたアルトバウの中2階が彼らの住まい。戦後、大きく改築されたらしく、入居する前はオフィスとして使われていたそうだ。特に廊下部分が広いのが特徴で、彼らの活動の一つでもあるアートの展示スペースとしても十分な幅があるのも決め手だった。

また、物件のあるシェーネベルク地区は西ベルリンの中でも環境がいい。近所に気の合う友人も住んでいたため、このフラットを選んだ。

ヴァディムは旧体制下の78年頃からモスクワで始まったフリーダム・ムーブメントのアート「モスクワ・コンセプチャリズム」の作家たちの作品のアーカイブを行ってきた。

そんな、ベルリンでは、まだあまり知られていないロシア人作家の小さな展示や作家によるレクチャー、朗読会、音楽家を招いてのパフォーマンスなどを催すために、作家たちのためのギャラリーのような空間〈フリーホーム〉を自宅内に設けた。

135㎡あるフラットの一番大きな部屋がメインスペースで、100人くらいまで集まれる。キッチンもオフィスだった頃のファンクションを残して、訪れた人たちが気軽にくつろげるようにしている。

自分たちのプライベートスペースはそんなに重要視はせず、関わるアートやイベントそのものに愛情を注いでいるヴァディムとマリア。玄関を入ってすぐの、本棚の横にはスライド式の障子のような敷居を作り、収納やゲストのコート掛けスペースを作り出した。イケアで買ってきたソファもあれば、旅先で出会ったアンティーク、道で見つけた棚や椅子もある。

各地で行われた展示のインスタレーションのための棚や作品自体が、さりげなくインテリアの一部となって空間に溶け込んでいた。