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カリーヴルスト、バニーチャウetc. 国境を越えてカレーはおいしくなる。Vol.2

インドから飛び出したカレーは、アジアはもちろん、海を渡って世界各国の食材と結びつき独自のローカル料理として根づいた。イギリスから日本に渡ったカレー粉がうどんと出会ったように、そのフレーバーは懐深くすべてを包み込んでくれる。国と国を混ぜてもおいしいカレーは世界を平和にしてくれるのだ。Vol.1はこちら

photo: Shin-ichi Yokoyama / text: Yuko Saito

ドイツのカリーヴルスト

カレー粉オンで、ベルリン市民のソウルフードになったソーセージ

ソーセージにトマトソースをかけ、カレー粉を振っただけで、ベルリン市民を虜(とりこ)にしたのがカリーヴルスト。戦後の食糧難の時代、屋台の女性が始め、広まったとか。〈IngoBingo〉の酒井佑樹さんが、ベルリンから遠く離れた店で働いていた時も「シェフが時々、お客さまに頼まれていました」。

酒井さんはその味を再現。自家製ソーセージに、カレー粉やブイヨンを加えたトマトソースをかけ、カレー粉を振る。ソーセージに入るスパイスと重なり、クセになる。

経堂〈IngoBingo〉カリーヴルスト
カリーヴルスト950円(フライドポテト付1,290円)。ナツメグやシナモンが効いた豚肉100%の自家製ソーセージ使用。

南アフリカのバニーチャウ

アフリカ大陸最南端で見つけた、カレーと食パンの異色作

ガバッとくりぬいた食パンにカレーを詰めたバニーチャウは、インド系移民が60万人以上住むダーバン生まれ。起源は諸説あるが、「イギリス人が、インド人労働者を畑で働かせるために、器を使わずに持ち運べるよう作ったと聞いています」と、南アフリカフード親善大使でもある〈Tribes〉の石川邦彦さん。

パンをちぎってカレーをつけつつ食べ進むと、パンがしみしみに。これもまたオツだが、持ち運びには??だから、今は立派なレストランメニュー。

セネガルのマフェ

ピーナッツとの出会いで生まれた、西アフリカのカレーライス

アフリカの中でも、洗練された料理で知られるセネガルの名物の一つが、ピーナッツ風味のカレー、マフェだ。「カレーというより、シチューに近い。セネガルに限らず、サハラより南の西アフリカで広く食べられている家庭料理です。

このあたりは、ピーナッツがたくさん採れるので、ピーナッツオイルやピーナッツバターをよく使うんですよ」と、かつてミュージシャンとしてコンゴで活動していた〈Los Barbados〉の店主、上川大助さん。必ずご飯と一緒に食べるのは、日本と同じ。トマトの酸味とタマネギやピーナッツバターの甘味、コクが織り成す滋味を、ここでは西アフリカの炊き込みご飯、ジョロフライスと。辛さアップは、自家製チリペースト“ピリピリ”で。

香港の香港チキンカレーライス

香港ブレンドのカレーパウダーが決め手の中華風カレーライス

「香港の人は皆、このカレーライスが大好き。だから、紹介できてほんとにうれしい」。ようやく日の目を見たかとばかりに喜ぶ、〈贊記茶餐廳〉のメイさん。構造的には日本のカツカレーに近いが、その味は「全然違います!」。ご飯(日本米)の横に、皮ごとパリパリに焼いた鶏肉がドーンと1枚。そこにかかるのは、アニスの風味と辛味が効いた中華テイストのカレーソース。

味の決め手は、「香港のカレーは、これなしでは語れない」というメイド・イン・香港のカレーパウダー。屋台の味、「カレーフィッシュボール」のソースにも、これを使うという。中印日が合体したかのようなこのカレーライス、濃厚に見えるソースも意外にあっさりしていて、完食必至。