Eat

イタリア料理が大集合!郷土愛に満ちた各州の代表料理20皿を平らげる

郷土色、郷土愛に満ちたイタリア料理は、多様性の宝庫。そんなイタリア郷土料理の継承をミッションとする〈オステリア・デッロ・スクード〉の小池教之シェフに、各州代表料理を作ってもらいました。いざ、イタリア料理のショーケースへ。

photo: Chihiro Oshima / text: Kaori Shibata

イタリア地域別、代表料理20皿

ある春の日の四谷三丁目、〈オステリア・デッロ・スクード〉にて。イタリア半島を北から南へ、沿岸部から丘陵地、そして山岳へ。前菜、パスタ、スープ、肉・魚料理、各地の特色を映す料理を、シェフの小池教之さんに作ってもらった。

小池さんは「北の料理は長距離走。しっかり時間をかけて仕込む料理が多く、煮込み時間も長い。一方、南は瞬発力の料理。フレッシュ感が大切で食材はチャチャッと、あまりいじくらない。中部の料理には両方の要素があります」と独自の表現でイタリア料理を俯瞰してみせる。

イタリアが国として統一されたのは1861年。歴史を遡れば、古代、北の森は狩猟生活を送っていたゲルマン民族の土地だった。一方の南はローマ帝国。ローマ人は魚、豆、野菜と穀物が中心で、肉は野蛮人が食べると考えていた。そのローマ人が肉食になったのは、西ローマ帝国が476年に滅亡した後のこと。

ゲルマン人の侵攻に敗れたローマ人にとって、肉は強さの象徴となった。こうして北と南の食は攻防し、融合していった。中部では、北と南の特色が混交し、各地の個性を育む。中世の都市国家時代が長かったことも、バラエティを生んだ大きな要因だ。

風土に紐付く基本食材として注目したいのが家畜。北は牛、南は羊、全土の豚。油脂は、北が動物性バター、南は植物性オリーブオイル、豚のラードは各地にある。チーズも連動して北は牛乳系、南は羊乳系が多い。これらが各地の料理のベースとなる。

料理的には、北部は厳しい寒さをしのぐ料理が特徴的。酪農が盛んで、エネルギーを蓄える動物性タンパク質、脂質たっぷりだ。対する南は温暖で、年間を通じて山海の幸、野菜にも恵まれる。新鮮な素材を生かした、手をかけすぎない料理が主力だ。

中部は、沿岸部が地中海的魚介料理、山間部は素朴な農民、羊飼い料理が郷土料理のベースにある。そして、シチリア、サルデーニャの島々には、島を行き交った民族が残した食材が料理に生きている。

イタリアの風土を大づかみしたら、20州の料理の旅を始めよう。背景を知って食べれば、イタリア料理はさらに面白く、おいしい。

イタリアの地図

北部

国境、アルプス山脈、酪農が形作る北の味

フランス、スイス、オーストリア、スロベニアと国境を接する北部イタリアには北ヨーロッパや東ヨーロッパ諸国の影響を受けた料理も。

山岳部は小麦がほぼ育たずパンも保存食。ガチガチに乾燥して堅くなったパンをスープや煮込みに浸して食べる。山の乳牛チーズは旨味豊かで料理にも大活躍。バター、生クリーム、ラードなどリッチな油脂分を用いる。中部に近づくと軟質小麦のパスタ圏内となり有名な手打ちパスタ料理が多い。

中部

イタリアの背骨、アペニン山脈の山、丘陵地、畜産と食

日本と同じく、海に囲まれていても中山間地が多いのが中部イタリア。海岸で魚介スープを食べているかと思えば、内陸は一気に山の料理に変わる。

家畜には牛も羊もヤギもいるが、南に近づくにつれて羊のチーズ、羊肉料理が目立ってくる。小麦は軟質小麦も硬質小麦も、両方のパスタが味わえる。油脂は動物性のバターからオリーブオイルへ。ラードを使う料理も魅力。植生の境目が様々な形で料理に表れているのが、中部料理の面白さ。

南部

元祖イタリア料理は素材の豊かさ、地中海式でヘルシーな料理

気候が良くどんな農作物も育つため、古くはギリシャ人の植民都市も多かった南イタリア。良質な硬質小麦、オリーブオイル、豆類、魚介類の産地で素材の新鮮さや素材力を生かしたシンプルな料理が多く、イタリア料理の源流といわれる。

チーズもまた、熟成系より鮮度勝負のモッツァレラ、チーズを作った後の乳清で作るリコッタなどフレッシュチーズの秀逸さが光る。トマトソースベースのイタリア料理は、南で誕生した。

島部

我が道を歩んだ独自の島料理、海を介して交流した民族の跡

地中海最大の島、シチリアは、地中海の覇権を争い多くの民族が入植。様々な民族が交易で運んだ食材が融合し、シチリア料理として定着した。

米、サトウキビ、アーモンド、レモン、サフラン、カカオはシチリア経由でイタリア本土に運ばれた。片やサルデーニャは、現在も独立心が旺盛な州。ほかとはルーツが異なり、元騎馬民族といわれるサルデーニャ人には馬の名手が多く、馬料理も有名。多くの謎に包まれた島。