〈虎屋菓寮〉の「満寿泉 貴醸酒氷」
真っ白な氷に餡と羊羹が合わさった上品な佇まい。日本酒をシロップに使った虎屋菓寮のかき氷だ。富山県にある桝田酒造店の「満寿泉 貴醸酒」がベースに。とろりとした蜜は上品な甘さと芳醇な香りが日本酒の存在感を物語っている。氷に合うように作られたなめらかなこし餡を器の底に敷き、貴醸酒と白餡で作られた羊羹、黒砂糖と寒天を使った琥珀羹をトッピング。かき氷とは異なる食感を堪能できる和菓子のアミューズメントが洗練された氷の味わいを一層引き立てる。
〈虎屋菓寮〉では、毎年数種類のかき氷のメニューが揃うが、日本酒を用いた氷は初めての試み。お酒の香りを感じつつも、さらりと溶ける柔らかな氷と程よい甘さが絶妙なハーモニーを奏で、スプーンはぐんぐん進む。見た目にも凛とした清涼感で満たされる。
〈櫻井焙茶研究所〉の「焙じ茶のかき氷」
冷涼ですっきりとした味わいのかき氷が気分なら、迷わず〈櫻井焙茶研究所〉を訪れたい。渋みのある焙じ茶をシロップにし、隠し味に藻塩、玄米を上からトッピングしたシンプルながら香ばしい甘みとほんのり塩味を感じるさっぱりとしたかき氷だ。味変には赤紫蘇シロップを。おばあちゃんの手作り紫蘇ジュースを思い出すように懐かしささえ運んでくれる。
そして一杯のかき氷とともに涼む時間をよりゆったりと感じられるのは、茶房ならではの心配りゆえ。ブレンドされた水出し緑茶のサーブに始まり、氷をいただいた後には、温かなほうじ茶も。それぞれ、香りを嗜むようにデザインされたオリジナルの茶器で。味も香りも空間も洗練され、体の奥から潤いが戻ってくるオアシスを体感したい。
〈Bar Pálinka〉の「カクテルかき氷」
暑い夏にかき氷でカクテルを味わうとしたら? それを見事に表現したのが神楽坂の〈バー パーリンカ〉。カクテルの作り方と同じようにシロップはオーダーごとに作られる。今回は、鮮やかなパープルに惹かれ葡萄をオーダー。巨峰6粒と、香りを楽しむハンガリーの国民的なお酒「パーリンカ」のホワイトグレープ、ドライシェリー、さらにハンガリー産の蜂蜜をシェイカーでミックス。
ふわふわの氷を口に含むと、まろやかな甘さと、華やかな香りが鼻に抜けパーリンカらしさを存分に感じられる。食べ進めるたびに少しつずつシロップをかけ、最後までカクテルとしての美味しさを味わえる。「氷で薄まったときでも美味しい状態であるように」とは店主の松沢健さん。新感覚カクテルという言葉がぴったりとハマる唯一無二のかき氷だ。
〈麦酒屋 るぷりん〉の「ホップのかき氷」
光沢のある黄色のシロップの上にこんもりとホイップが載せられたかき氷に、ごくりと喉が鳴る。そう、見た目はまるでビールのよう。〈麦酒屋 るぷりん〉が、ルパン三世の中で、ビールをかき氷にかけるシーンにヒントを得て、構想から10年を経てようやく完成させた。
ピール入りのレモンシロップに生のホップを漬けて寝かし、ほんのり苦味を引き出したビールの風味を感じさせるかき氷。トッピングされた甘さ控えめの豆乳ホイップとともに食べ進めると、氷の中には、抹茶ムースが隠れていて食べ飽きない。さらに本物のアルコールをかけて味変も楽しみたい。世界的にも人気のウイスキー〈イチローズ〉の「モルト&グレーン ホワイトラベル」をかけると苦味が引き出され一段と味わいが増す。
〈ブルーボトルコーヒー〉の「コーヒーとミルククリーム かき氷」
よく行くコーヒーショップでかき氷を味わえたら。そんな気持ちを察してか、今年も〈ブルーボトルコーヒー〉でかき氷がスタート。人気を博した昨年同様、渋谷区西原にあるこんにゃく寿司とかき氷の〈KON〉が監修する。カフェオレソースをベースに、〈ブルーボトルコーヒー〉のスペシャリティコーヒーを使ったシロップをかけ、隠し味にはオレンジピール、そしてトップにはたっぷりと生クリームが添えられている。中にはキャラメルソースやビターなチョコクランチが層になっていて、コーヒーの味わいにほろ苦さも感じられる。
〈KON〉のかき氷のために作られたオーダーメイドのマシンを使用しているため、なめらかな口溶けも実現。甘すぎずふわりと溶け、コーヒーブレイクをかき氷で楽しめる夏ならではの一杯に。
〈ワインショップ・エノテカ & バー 表参道ヒルズ店〉の「スパイス香るソーテルヌのグラニテ」
〈ワインショップ・エノテカ & バー〉によるかき氷は、世界3大貴腐ワインの一つであるソーテルヌをグラニテに。贅沢にもワインをそのまま凍らせて削っているため、最後の一口まで薄まることなく、甘く香り高いシャリッとした食感の氷が口いっぱいに広がる。カクテルグラスに盛り付けられ、見た目にも華やかで、一口含めばアルコールもしっかりと感じられバーならではの逸品。お酒を嗜む感覚でいただける。
氷の上には、ドライレモンとフローズンラズベリー。氷の下にはママレード。そしてカルダモンがかけられていて、甘さだけではなくスパイシーな爽やかさも感じられる。溶けていくグラニテと合わさり、それぞれの食材がマリアージュを見せ、カクテルと同じように複雑な味わいの層を織りなす。