1.「ノーサイド」
松任谷さんの歌詞に一貫して漂うのは、無常感。一見華やかな時代を代表する音楽に思われがちですが、どの曲も、時は移ろい、輝かしい青春もいずれ過ぎ去ることを暗に示していて。どこか「死」の匂いがするところに最高峰のすごみがあると思っています。その諦観を象徴するのがあるラグビー選手の物悲しい瞬間を描いた「ノーサイド」。スローモーションで放ったボールがゴールから外れた様子、人々が競技場から立ち去るさまなど、聴いた瞬間に情景が目に浮ぶところが見事です。
2.「DESTINY」
失恋相手への未練を歌った「DESTINY」は、最後の数行に小説のようなオチが。その構成に鳥肌が立つと同時に、相手にとらわれている状態こそが「詰んで」いるのだと悟るそのオチそのものにも諦観が現れています。
3.「ダイアモンドダストが消えぬまに」
松任谷さんの作詞の真髄が詰まっている「ダイアモンドダストが消えぬまに」。幸せな恋人同士の様子を描いた前半から一転、後半では一人のクリスマスを描くという、時間経過を示す大胆な2部構成の妙が光ります。また、きらびやかな時間を歌っているはずの前半にも“バブル”の儚さと不吉さが透けて見える。ポップさに隠して本質を歌うとことに痺れますね。