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ルールにとらわれず、感性に身を委ね形にしていく。音楽家・諭吉佳作/men

アプリやゲームで遊ぶように制作を始め、出来上がったばかりの新作をSNSにアップする日々。どこからともなく火がついて、大きな仕事に繋がることだってある。場所や道具、慣習やルールにとらわれない動きで、想像を超える“次の次”を生み出す音楽家・諭吉佳作/menに突撃!アンダー25、Z世代の表現者の現在地と、未来のビジョンを見る。

photo: Riku Ikeya / text: Emi Fukushima

ルールにとらわれず
感性に身を委ね形にしていく

トラックメイクから作詞作曲まで1人でこなし、楽曲提供も手がける音楽家の諭吉佳作/menさん。その音楽性の原点にあるとも言えるのが、幼い頃に観たアニメ『トムとジェリー』だそう。「爪で引っ掻いたり、叩いたりという動作に対する効果音が気持ちよくて。現実には鳴らない不思議で自由な音に昔から憧れていたのかもしれません」

その言葉の通り、生み出される音楽には、打ち込みの楽器音と環境音を組み合わせた、自由で心地よい音が連なっている。日常生活の中では、気になる音に出くわすたび、スマホに録音するのが習慣になっているそう。「鳥の変な鳴き声とか、工事現場の謎の音とか。何に使うかは決まっていなくても、耳に留まった音はとりあえず録(と)っていて。曲の中にさりげなく紛れ込ませることもありますね」

本格的な作曲は、楽器の演奏ではなく「GarageBand」というスマホアプリから始めたという。ゲームを覚える感覚で手を動かし、感性のまま曲を作ってきた。それはツールがPCになった今も同じことで、作曲はひたすら自分と向き合う作業。ゆえに、時に自分の存在を忘れる時間が必要になる。

「時々するのが漫画の音読(笑)。セリフを読んでいると、自分のことを考えなくていいので、すごく心がまっさらになるんですよね。あと、何度も同じ映像を観て心を落ち着かせる時間も大事。『トムとジェリー』もよく観る作品の一つです。そうやって蓄えたエネルギーを養分にすると、また“よし、作ろう”って思えるんです」

「unbirthday」。今年8月からの3ヵ月連続配信シングルの第3弾。“もう心配ないよ”のフレーズが多用され、テーマを意識して制作した楽曲とのこと。
「ムーヴ」。諭吉さんにとって初のCD作品となった2021年リリースのEP『からだポータブル』に収録されている。

諭吉佳作/menの次を生み出す仕事術

  1. 自分が心地よく感じる音を大切にする。
  2. 日常の中で耳に留まった音を録音する。
  3. 感性の赴くままに、手を動かす。
  4. 自らの存在を忘れられる時間を作る。
  5. 同じ作品を何度も観て、心を落ち着かせる。