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YOASOBI、山下達郎のMVを手がけるアニメーション作家、イラストレーター・藍にいなの仕事術

アプリやゲームで遊ぶように制作を始め、出来上がったばかりの新作をSNSにアップする日々。どこからともなく火がついて、大きな仕事に繋がることだってある。場所や道具、慣習やルールにとらわれない動きで、想像を超える“次の次”を生み出すアニメーション作家、イラストレーター・藍にいなに突撃!アンダー25、Z世代の表現者の現在地と、未来のビジョンを見る。

photo: Keita Sugeno / text: Emi Fukushima

音楽の物語を
色彩とフォルムの妙で描き出す

幼稚園生の頃は「人間の顎がうまく描けたことに喜ぶ子供だった(笑)」と振り返る藍にいなさん。幼い頃から絵にまっしぐらだった彼女は、鮮やかな色彩のアニメーションでドラマティックな世界を描くアーティストに成長した。インスピレーションの種は“物語”だ。

「MVであろうと一枚絵であろうと、背景にある物語を想像・妄想することから始まります。YOASOBIの『夜に駆ける』のMVを作った時も、楽曲の基になった小説から、さらに登場人物の設定を私なりに練り込んでいって。2人はどんな生まれ、性格で、どんな経験をしてきたのかをA4の紙にびっしり書いていく。その作業を経ると、のびのびと描き進められるんです」

仕事を始める前から、音楽を聴いてそのイメージをスケッチに起こすのが好きだった彼女。楽曲の世界を独自に解釈し、深める技術は自然と身につけてきたものだ。ゆえにそのクリエイションは、音楽にフィットするどころか奥行きまでもたらす。「楽曲のスケール感と違わない映像にすることは、気をつけていますね」と藍さん。

また、目に留まる作品にするための工夫も随所に。「一秒観ただけで記憶に残る色味やフォルムをベースにすること。あと、手描きっぽい線をあえて残すのも心がけていることです」制作中は、細部までこだわり作品の物語世界にどっぷり浸かるが、「公開されたら一気に忘れる(笑)。あまり振り返らないタイプですね」とドライな一面も。その軽やかさが、人々の心を掴む新たな物語を生むことだろう。

藍さんが全編アニメーションを手がけた、山下達郎「さよなら夏の日」のMV。

藍にいなの次を生み出す仕事術

  1. 背景にある物語を想像して描き進める。
  2. 一目で記憶に残るインパクトを大切にする。
  3. 楽曲のスケール感と違わないようにする。
  4. アナログなタッチを随所に残す。
  5. 一度世に出た作品は、振り返らない。