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スタイリスト・林道雄が通う、目利きの店。学芸大学〈YOU ARE WELCOME〉

店の雰囲気、品揃え、店主やスタッフの人柄。思わず足を運んでしまう理由は人それぞれ。目利きたちに聞いた、“信頼できる店”とは。

photo: Masanori Kaneshita / text: Emi Fukushima / edit: Chizuru Atsuta

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セレクター:林道雄(スタイリスト)
店長:矢口周太郎

YOU ARE WELCOME〉に並ぶのは、有名無名関係なく店主の矢口(周太郎)くんの審美眼だけを頼りに集められた家具や雑貨です。例えば僕が買ったのが、無垢の木をくりぬいた壺。店内で美しいなと思って手に取ったんですが、彼に聞いたらどこの誰が作ったものかわからないとのこと(笑)。かと思えば隣には有名作家の器が。セレクトも並べ方も、センスの塊としか表現し得ないカオスさに惹かれています。

学芸大学 YOU ARE WELCOME 店内
80年代以降のポストモダンデザインを中心に、造形がユニークな国内外の椅子も揃う。

僕も含め広くデザインに関わる仕事を続けていると、立ちはだかるのが「モダン」と〈バウハウス〉の壁。デザインも機能も優れたこれらのプロダクトを前にすると、いかに距離を置くことができるかとの葛藤に直面するんです。そこで気になるのが、モダンの反動で生まれた前衛的な「ポストモダン」。

勝手な想像ですが、矢口くんはモダンデザインを敬愛しながら、ポストモダン的感覚でセレクトしているんじゃないかなと。だから造形的にも色彩的にもユニークなものが揃うのではと推察します。

名が知れて価値が定まっているものは、ある意味ネットショップの方が有利な場合もあるかもしれません。ハンス・J・ウェグナーの椅子もベルント・フリーベリの花器も大好きだけど、これらを買うならまずはできるだけ価格が安いものを求めてネットを探ります。

一方で価値が定まっていないものは、アプローチのしようがない。未知のものを目にすることができる店にこそ行きたくなります。僕が〈YOU ARE WELCOME〉に行きたくなるのは、矢口くんが買い付けで海外を回って戻ってきた直後。今の彼のアンテナに引っかかったものをすぐに見たいんです。店主のセンスが具現化された店は、セレクトショップのあるべき姿。こういうお店が増えてほしいですね。

学芸大学 YOU ARE WELCOME 店内
ヨーロッパ、アメリカ、アジアから日本まで、国内外問わず各地からセレクトされたものが並ぶ店内。プロップスタイリストとしても活動し、アートやプロダクトのデザインもする店主・矢口さんによるオリジナルの什器(じゅうき)も点在する。

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