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映画評論家・三浦哲哉の「私の食堂、私の一皿」。〈カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ〉のオムライス

洋食には「おいしい」や「好き」だけではない思い出や物語があります。あの人は、どんなメニューが好きなんだろう。洋食を愛する映画評論家・三浦哲哉さんにお気に入りの食堂と一皿を綴ってもらいました。特別な一皿をどうぞ。

photo: Satoko Imazu / edit: Rie Nishikawa

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神奈川・鎌倉〈カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ〉のオムライス

寄稿・三浦哲哉

洋食の魅力は、たとえば小さい頃(私の場合は昭和50年代です)に読んだ、絵本の中の舶来文化の世界、そのメルヘン的な遠さの魅力である、と思います。モーリス・センダックが描いたような、ここではないどこかの食べもの。かっこよくて、洒脱で、夢見心地にさせてくれる。

この魅力を私が一番感じるのが、〈カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ〉のオムライスです。もう何から何まで完璧で。白い皿に収まった姿が、とにかく夢のように素敵です。香ばしく、ほろ苦く、ほっとする味。幻滅する要素が1ミリもありません。

店主の堀内隆志さんが南米で買い付け、焙煎するカフェも抜群においしく、店内でかかっているブラジル音楽のセレクトもすばらしく、「洋」……はるかかなたの魅惑が今も更新されながら息づく、最高のお店です。(筆)

神奈川〈カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ〉のオムライス
優しいデミソースが全体にかかる。ふわふわの卵はチーズ入り。ミニサラダ付き950円。

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