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神楽坂〈小路苑〉店主・吉田耕治さんが教えてくれた「骨董品」との付き合い方

他からの評価ではなく、自分の暮らしにとって価値があり、心から大切にしたいと思えるものを持つ。それを理想とするなら、自分なりのスタンスで、骨董品と素敵な「付き合い方」をしている人に魅力を教えてもらうのは、骨董を深く知る手だての一つだろう。古いものとどのように出会い、どう生活に取り入れているのか。吉田耕治さんに教えてもらいました。
初出:BRUTUS No.799『尊敬できる「骨董品」』(2015年4月15日号)

photo: Shota Matsumoto / text: Yuka Uchida

どう使うかは持ち帰ってからゆっくり考えればいい

錆びた鉄製の花器

紙の裁断所だった古い建物を改装し神楽坂の住宅地で花屋〈小路苑〉を営む吉田耕治さん。骨董に目覚めたのは、雑貨ブランドに勤めていた20代半ば。商品のデザインソースとしてアンティーク雑貨に触れるうちに、古いものへ惹かれていったという。

「錆びて、ペンキが剥げた、この質感が好きなんです。店の棚や机も似たようなものばかり。年代や国は気になりません」

左端、蘭を植えた壺はベルギーの、シルバーのポットはパリの蚤の市で見つけたもの。日本で探す時は、骨董市を覗くか、西荻窪の〈魯山〉に行くという。

「赤い鉄製の容器は〈魯山〉で出会いました。器に紛れて、面白い骨董がポツポツと置いてあるんです。背の高い筒形のものは富岡八幡宮の骨董市で。いずれも花器として使っています」

骨董探しのポイントは、先に買うものを決めないことだそう。

「例えば、花瓶を探そうと思って市に出かけたりはしないです。散歩気分で骨董市を歩いていると、面白いものが目に留まる。値段を聞いて納得すれば、どう使うかは考えずに買ってきます。まぁ、花屋なので花を生けることは無意識に頭にあるかもしれないけれど、持ち帰ってから、さて、どう使う? と考える。それもまた楽しみなんです」

花器とドライフラワー
花器にドライフラワーを合わせた吉田さん。枯れた植物と錆びて風化した鉄に一体感が生まれ、一つのオブジェのようだ。