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おうちでも、お店でも。焼肉をもっと楽しむQ&A〜焼く前編〜

すぐにでも焼いて食べたい!と、はやる気持ちを抑えつつ、「焼く前に知っておくといいこと」&「焼くときに気をつけるべきこと」を、〈ナスキロ〉オーナーシェフの高山いさ己さんとフードアクティビストの松浦達也さんに聞いてみました。

illustration: Takahiro Shimada / styling: Miho Iguchi / photo: Shin-ichi Yokoyama / text: Haruka Koishihara

Q:和牛と国産牛って何が違うの?

A:「和牛」と呼べるのは4種類の牛だけ。

「和牛」とは牛の種類を指し、認められているのは「黒毛和種」「褐毛(あかげ)和種」「無角和種」「日本短角種」の4種と、それらの交配で生まれた牛のみ。そのうち「黒毛和種」、俗に言う“黒毛和牛”が、約98%と圧倒的なシェアを占めている。というわけで、焼肉店で登場する「和牛」のほとんどは黒毛和種。軟らかくきめ細かな身質や甘い香りが特徴だ。

一方、健康志向の高まりで、赤身がおいしい「褐毛和種」も人気上昇中。そして「国産牛」とは、牛の種類を問わず「日本国内での肥育期間が最も長い牛」のこと。さらには、和牛に国産牛であるホルスタインなどを掛け合わせた「交雑種」や、アメリカやオーストラリアなどの「輸入牛」と、さまざまな種類が。

しまだたかひろ イラスト

Q:「いい肉」の見分け方って?

A:チェックしたいのは「包丁の入り方」。

焼肉店においてのいい肉=単に高い肉、とは限らない。「正肉に関しては、色艶の良し悪しやサシの質は素人には判断が難しいので、見るべきは店の“仕事”。焼肉の場合、熱がうまく入るように隠し包丁が入れてある、食べやすいように筋が切ってある、といった点を重視したいです」(松浦)。

「ホルモン類は比較的わかりやすいですね。全体にハリや艶があって断面のエッジが立ったレバーは鮮度がいいし、皮がピカピカで脂が真っ白なシマチョウやミノも一目瞭然。食欲をそそられます」(高山)

Q:A5=旨い肉なの?

A:好みに合うかは別問題。目安の一つとして。

「A5」とは、㈳日本食肉格付協会が決める牛肉の格付け表示。アルファベットは、一頭の牛から取れる枝肉の割合を指す「歩留まり等級」。取れる肉の割合が高いほど等級も高い。そして数字が意味するのは「肉質等級」。

BMS(牛脂肪交雑基準)とBCS(牛肉色基準)、肉や脂肪の光沢、肉の締まりやきめなどの4項目から5段階評価される。が、「A3やA4の霜降り具合が程よくて好き」という人も多いし、A5が絶対!とは限らないのだ。

肉質等級の表
歩留まり等級は「A・B・C」の3段階、肉質等級は「1・2・3・4・5」の5段階。この組み合わせで全15ランクに分類される。

Q:ダクトの種類で味が変わるって本当?

A:香りやしっとり感に影響する可能性が。

焼き台から立ち上る煙を吸い込むダクトがあるお店、快適です。が「網の横にダクトがあるタイプは肉が乾く、冷めるという説が」(松浦)。「煙が吸い込まれると、肉の香りを感じづらい」(高山)と、焼肉の醍醐味が半減するという2人。

「煙が嫌なら焼肉には行くな、と言いたいくらいに煙モクモクなお店も愛しています!」(松浦)。しかし!臭いが気になる日はサイドダクトが最高!

サイドダクトと上引きダクト
左は「サイドダクト」。網のすぐ横から煙を吸い込むので、店内に煙が回りづらい。右は、焼き台の上から吸い込む「上引きダクト」。

Q:オーダー順の正解を教えて!

A:まず2人のオーダーを真似してみては?

「とりあえずタン塩」な人、多いはず。「味も食感も軽くて、トップバッターに最適ですよね。最初から歯応えのある部位を食べると満腹中枢が満たされちゃいますし」(高山)。そこから塩系ホルモンまでは2人ともほぼ同じだが、高山さんはこっくりした味を、とサシが入った“いい肉”をタレで、からの、お口直しに薄い肉を経て味噌ホルモンで〆。

一方の松浦さんは「塩→タレの間に、煮込みとご飯を挟んでから、ご飯を残しておいてタレのカルビ&ハラミへ。タレの肉にはご飯がどうしても欲しくて」。突き詰めると、正解は人それぞれ!

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Q:網、鉄板、ガス、炭……
道具ごとのコツは?

A:道具ごとのクセを理解すれば、もっとおいしく。

店によって、結構違いがある焼き台。昔ながらの焼肉店によくあるのは、火がおきた炭の上に網がのっている七輪、あるいは縞模様にスリットが入った鉄板で焼くガスロースター。そして今どきの高級店では、テーブル埋め込み型のガスロースター+網が主流。「炭×細めの網は、ホルモンに最適。余分な水分が抜けてパリッと焼ける!同じ網タイプでも、水分が抜けにくいガス×太めの網は、肉との接地面が多く正肉の方が焼きやすい」(松浦)。

「ガス×鉄板は、エリアごとの温度差を把握すれば正肉もホルモンも両方おいしく焼けます。炭は火力の調節ができないので難易度高め」(高山)。お店の設備+自分のスキルで、焼く部位を選ぶのも手かもしれない。

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Q:網はいつ交換するの?

A:味を変えたとき、スマートに頼もう。

焼いているうちに、網が汚れるのは必然。「ねぎタン塩はネギが付着しやすいので、食べた直後に換えてもらうのが常」(松浦)。「2種類以上の味つけを頼んだときに、黙っていても換えてくれるお店は気が利いてますよね」(高山)。そして、お店の人に自分から交換を頼む場合は、繁盛店では頼むタイミングにも配慮するのが“いいお客”。

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Q:焼肉通のマル秘テクを教えて!

A:「チョイ足し」調味料を注文!

「みんな、これ絶対やった方がいいですよ!だいたいの焼肉店にはあるので、対応してくれるはず」と高山さんが教えてくれたのが、ゴマ油、塩、レモンを別に注文すること。焼く前に肉にゴマ油をまとわせジューシーに香り高く焼き上げたり、タレの焼肉に塩をひとつまみのせて味をきりりと引き締めたり。使い道は無限大!