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球体のツリーハウスに、カプセル型の小屋まで。世界のスモールハウスが大集合!

日本人は、ちっちゃな空間を作るのが大得意みたいですが、世界に目を向けてみれば、各地にも狭空間マニアはいるものです。環境やしきたりなどに即してデザインされた、世界のスモールハウスを紹介。もちろん、今でも一生懸命働いている可愛いヤツらです。

初出:BRUTUS No.662『居住空間学2009 小さくてわがままな部屋。』(2009年5月1日号)

text: Takaaki Suzuki (France), Tetsuo Fukuda(Denmark), Rumi Fukasaku(Spain, Canada, Italy, Germany), Yumiko Urae(Germany), Mika Yoshida&David G. Imber(USA)

フランス

味のある釣り小屋を手に入れて、
ちょっとしたバカンスに利用

フランスの漁村に古くから存在するのが、このカラフルなカバンヌ・ドゥ・ペッシャー、漁師が使う釣り小屋。漁業と、道具の保管のために作られ、浜から至近のところに多く見られる。最低限の材料で建てられた内部はいたってシンプル、ほとんどが一部屋で使い勝手はよし。現在では、ピクニック、魚釣り、海水浴など、週末のレジャー用にも使われ、大人気です。

フランス『カバンヌ・ドゥ・ペッシャー』
ボルドーの南西、牡蠣(かき)養殖で有名なアルカッションの小さな漁港にあるカバンヌは、カラフルで素朴さ満点。©Henri Bailleul

スペイン

伝統的建築構造を現代風に再解釈、
「エコ」にこだわる賢い小屋

革新的なエコ建築で注目されるスペインの建築事務所、〈エコシステマ・ウルバーノ〉のカーサ・ラノン。北スペイン、アストゥーリアス地方の伝統的穀物貯蔵倉の建築構造を現代風に再解釈したもの。小屋の下の敷地も含み自然破壊を最小限に抑え、換気穴などの工夫で冷暖房も無用。素材にはスチールと木を使っており、たたむこともリサイクルすることも可能です。

スペインの建築事務所、〈エコシステマ・ウルバーノ〉のカーサ・ラノン
2階建てになっている理由は、気候と生態を最大限に利用して室内の快適温度を得るため。

ローマ時代以前から変わらない
北西スペインの藁葺き屋根の住居

パリョーサは、スペイン北西に位置するアンカレス山脈の村々に見られる伝統的石造り、藁葺き屋根の小屋。特徴はその円錐形の屋根と直径10mから20mの円形または楕円形の壁。ローマ時代以前に作られるようになった住居だといわれ、20世紀後半まで孤立した山々の村で使用されていた。現在でももちろん現役で活躍。よいアイデアとは長持ちするものです。

北西スペインの藁葺き屋根の住居
森の妖精の住居をすら連想させるこの小屋は、山の厳しい冬からも家族とその家畜を守る造り。©Turgalicia

デンマーク

コンセプトは登ること。
木登りをした子供の頃に戻って

1996年に開催された有名建築家による小屋のコンペ。その後、出展作品の一部はルイジアナ美術館のコレクションに。スウェーデンの建築家、ラルフ・エアスキネによる塔のような小屋も、作品の一つ。塔は木登りをするイメージを形にしたとか。小屋の中を登っていき、そしてテラスになった屋上でピクニック。外壁は蔓草が絡むようにと格子状になっています。

1996年に開催された有名建築家による小屋のコンペ
当初の提案では、花の咲く木の幹を囲むように塔を作り、塔のトップから枝が広がるようになっていた。

量子論の父、ニルス・ボアの
サマーハウスは長細いサイドボード

ニルス・ボアの依頼を受け、サマーハウスを設計したのはルイジアナ美術館で有名な建築家、ヴィルヘルム・ボーラート。住宅を一つの家具として捉えた結果出来上がったのは、中が4つに仕切られたサイドボードのような細長い建物。雨戸、庇とマルチな機能を持つ木製扉を開けると、中はそれぞれ独立した部屋。それぞれの移動は外のデッキを通してのみ可能です。

建築家、ヴィルヘルム・ボーラートが設計したサマーハウス
1957年に設計されたサマーハウス。一部屋は3×4m。これが基本のモジュールとなっている。©Ole Akhøj

フレキシブルなキューブ。
アルネ・ヤコブセンのKubeflex

サマーハウス用として1970年に発表された、ボックス形プレハブ住宅、キューブフレックス。3.36×3.36mのキューブを組み合わせ、用途に合う住空間を作るもの。壁となるパネルにもドア付き、窓付き、ガラスなどのバリエーション。だが発表当時、このアイデアはあまりにも斬新で、結局生産されたのは試作品のみ。試作品は現在トラップホルト美術館のコレクションに。

アルネ・ヤコブセンのKubeflex
修復され美術館に展示されたKubeflex(キューブフレックス)。製品化されなかったため、一部の人にしか知られていなかった。

カナダ

持ち運びも自由自在。
フリーな球体小屋なのだ!

カナダのヴァンクーヴァー・アイランドに誕生した究極の球体小屋。大きいもので直径約3.2mの球がロープで宙に吊られる。持ち運び自由自在、購入はもちろん、1泊125カナダドル(約10,300円)〜でレンタルも可。大自然の中、揺り籠のように風に揺られて、安眠も約束されたようなもの。子供の頃憧れた、こえだちゃんの家も顔負けの本格的大人のツリーハウス!

カナダ ヴァンクーヴァー・アイランド 球体小屋
設計には生体工学を土台とし索具(さくぐ)を船のマストに張る技術を採用。http://www.freespiritspheres.com ©Denis Beauvais

ドイツ

モービルリビングを追究した
プロダクトデザイン小屋

ヴェルナー・アイスリンガー設計のロフトキューブは3日で組み立てが可能という、2005年に発表されたモジュールハウス。「家から離れていてもアットホームになれる空間」を想定。幅約7m、高さ3.5mで、四方がガラス張り。ビーチで山で、テレビのスタジオやデザインホテルの屋上でと、タウン&カントリー両用の、眺めのいい小屋です。

ヴェルナー・アイスリンガー設計のロフトキューブ
森に佇むメルへンかつモダンなロフトキューブは、高層ビル屋上や建物内など、都会にも出現します。©Steffen Jänicke

子供と楽しんで寛げる家族用
ツリーハウスはバルコニー付き

木の上だからって狭い思いをする必要はない。そのことを実証してくれるのが北ドイツにあるDjuren(ジューレン)と名付けられた〈バウムラウム〉作のツリーハウス。木の薄板が施された、白い壁のカーブが特徴のキャビンで寛げるのはもちろん、テーブルと椅子を置ける大きさのバルコニーではゆったりと食事も楽しめる。大人も子供も一緒になって遊んで寛げる樹上の小屋。

北ドイツにあるジューレンと名付けられた〈バウムラウム〉作のツリーハウス
さすが木の国ドイツらしい発想。〈バウムラウム〉はツリーハウスの専門家。http://www.baumraum.de

イタリア

未来の小屋はこんな感じ⁉
最新型アルピーン・カプセル

満天の星の下で快適に眠りたい。そんな願いをデザイン界の異才、ロス・ラヴグローヴ様が叶えてくれる。彼が今イタリア・アルプスのアルタバディアにあるスキー場用に開発中のこの未来型小屋は、特別反射コーティングを施した直径8mのガラス製のカプセル。ソーラーパネルと風力タービンが合体した装置で電気も完備。寛いで360度の星空風景を楽しめる。

ロス・ラヴグローヴが設計した型アルピーン・カプセル
最新技術の未来派デザインは、周りの風景をそのまま映し、シュールに自然に溶け込む。2010年完成予定。

アメリカ

コロコロ~ッと、草原をどこまでも。
1台(?)欲しい、「転がる小屋」

足元に注目!ワシントン州にあるこの小屋、なんと車輪付き。場所や向きを自由に変えられるだけじゃなく、高床式だから眺めもよくて、洪水にも対応できる。夏は灼熱、冬はドカ雪という当地の厳しい気候からも、独特なスチール屋根が守ってくれる。RV車として認可も得ていて、何軒(何台?)も集まっている様子はゴツイ木馬の群れみたいで相当ラブリー。

建築家トム・クンディグが設計したローリング・ハット
その名もローリング・ハット。建築家トム・クンディグが顧客の依頼を受けて設計した。photo:Chad Kirkpatrick