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岡山〈ラ・グランド・コリーヌ ジャポン〉卓抜した技術と知恵と経験で、気負うことなく、日本ならではの唯一無二のワインを造る

この10年ほど、全国で次々と新しいワイナリーが誕生し、世界に通用するワイン産地として可能性を見せ始めたのが日本。新世代の造り手たちは、ブドウ栽培には難しい日本の気候条件とも折り合いをつけつつ、独自のワインを造り始めている。ナチュラルワインの大きな河を遡る旅は、いよいよ水源地となる「生産者」のもとへ。

photo: Noriko Kidera / text: Michiko Watanabe

大岡さんが自身のワイン造りを、わかりやすく教えてくれた。収穫したブドウはどんどんタンクに入れ、そのまま3週間ほど置く。発酵したら足でブドウを踏んで潰しプレス。熟成したら瓶に詰める。無濾過、無清澄。野生酵母による発酵で、ブドウ以外は無添加、亜硫酸不使用。

「ムリに抽出しなくても、凝縮したいいワインができます」。この、ベテランならではの自然体のワイン造りはたくましく力強い。「フランスでやってこなかった、まったく新しいことをやりたい。日本でしか造れないワインを造ろう」、そう思って帰国した。いろいろ試す中、「これは」と思った品種が山ブドウ系の小公子だった。

2017年から栽培を始め、19年に初収穫。現在、点在する計2ヘクタールの畑をほぼ一人でまかなう。この秋からまた、フランスと行き来する生活が始まりそう。間違いなく、岡山の宝となる人物だ。ドメーヌ名は大きな岡の意。

古樽と大岡さん
居並ぶ古樽はワインを造っている友人から買って、フランスで使っていたもの。日本に持ち帰り、引き続き使用。

赤、白とも未来を見据えて、テスト醸造も多数

右のラベルなし2本は試験的に造った柑橘のワイン。うまく着地できれば農家の福音となるかも。中央は「小公子2020」6,500円。小公子90%、ふじのゆめ10%のブレンド。左の「ル・カノンミュスカ・ダレクサンドリー2021」3,200円(共に参考価格)はアレキ100%のペティアン。いずれもブドウ以外は何も入れない造り。蔵元では完売。来季分は、公式サイトで会員登録すると送られてくる案内に沿って注文可。

岡山空港の南、車で5分ほどの距離にある米倉庫を改造した醸造所は、ネットオークションで格安で購入した中古品のオンパレード。ピカピカしたものが一つもない。弘法筆を選ばず、とはまさにこのことだ。

「いやなに、ビンボーのせいですよ」と大岡さんは笑うが、今ある資源を活用する大切さ、また、初期投資を抑えても立派に醸造所ができることを見せてくれている。露地で有機栽培が可能な新品種や、より手間のかからない栽培方法を開発するなど、未来まで視野に入れたチャレンジを続けている。後進の若者よ、来たれ、そして彼に続け。