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今のアメリカに必要な政治家は。ホワイトハウスをめぐる、3つの文芸

2016年のアメリカ大統領選挙の後、ドナルド・トランプを支持した貧困白人労働者たちが暮らすエリアの現実を浮き彫りにしたとして、J・D・ヴァンスの自叙伝『ヒルビリー・エレジー』が話題となった。

text: Keisuke Kagiwada

今のアメリカに必要な政治家は

2016年のアメリカ大統領選挙の後、ドナルド・トランプを支持した貧困白人労働者たちが暮らすエリアの現実を浮き彫りにしたとして、J・D・ヴァンスの自叙伝『ヒルビリー・エレジー』が話題となった。

当時トランプを批判していた彼は、しかし現在トランプ政権下において副大統領を務めている。彼の真意はどこにあるのか。それを探るため、再び『ヒルビリー・エレジー』を読む人が増えているという。

『ヒルビリー・エレジー』J・D・ヴァンス/関根光宏、山田文・訳
弁護士となったヴァンスが、地元である“ラスト・ベルト”と呼ばれる荒廃した工業地帯の白人たちの置かれた状況を探る。光文社/1,980円。

ところで、近年はホワイトハウスと縁の深い人物たちが、実体験を反映させつつ政治スリラー小説を執筆するのが流行らしい。

元国務長官で16年の大統領選でトランプと戦ったヒラリー・クリントンは『ステイト・オブ・テラー』(ルイーズ・ペニーとの共作)、ヒラリーの夫であり元大統領のビル・クリントンも『大統領失踪』(ジェイムズ・パタースンとの共作)を書いている。

前者は爆弾テロ、後者はサイバーテロに、本人の分身と思(おぼ)しき政治家が立ち向かうエンタメだが、同時にフィクションを通して今のアメリカに必要な政治家像を示そうとしているようにも思える。