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あなたは、何と言って葬られますか?忌野清志郎、石原裕次郎、いかりや長介らに送られた言葉

どんな人間にも等しく訪れる“死”。その瞬間を迎えるときの言葉について考えることは、自分がどう生きるかを考えることと同義だ。深く心に沁みる言葉で最期を締めくくった人、温かい言葉で弔われた人。その言葉が美しいのは、彼らの生き様が美しかったからに違いない。「美しい辞世編」はこちら

初出:BRUTUS No.673美しい言葉』(2009年1015日発売)

illustration: Utagawashinbun / text: Toshiya Muraoka

あなたは、何と言って葬られるのでしょうか?

自分が死んだ後のことを想像してほしい。あなたが親しい人々に葬られるところを。ナンシー関や武満徹のように、「無二の存在」として言葉をかけてもらえるだろうか。

忌野清志郎やいかりや長介のように、盟友が心温まる思い出を語ってくれるだろうか。自分では決して見ることのできない世界から、どんな言葉が送られるのか、それは自身の生き方にかかっている。

フィデル・カストロ → チェ・ゲバラ

もしも、わが革命戦士、わが戦闘員、わが国民はどうあってほしいかと意見を求められたら、どんな迷いもなしに、こう言うにちがいないでしょう。チェのごとくあれと。

原田芳雄 → 松田優作

優作。
俺は今までお前が死ぬとこを何度も観てきた。
そしてその度にお前は生き返ってきたじゃないか。
役者なら生き返ってみろ!
生き返ってこい!

森田一義 → 赤塚不二夫

私もあなたの数多くの作品のひとつです。

キアヌ・リーヴス → リヴァー・フェニックス

若い僕たちはさまざまな失敗を犯してきた。
でも後悔は何の役にもたたない。
ただその辛い経験を教訓にして、二度と同じ失敗を犯さないようにしていくしかないんだ。
彼に会いたいよ。
ミスター・フェニックスに…
寂しいよ。

甲本ヒロト → 忌野清志郎

あなたとの思い出に、ろくなものはございません。突然呼び出して、知らない歌を歌わせたり。なんだか吹きにくいキーのハーモニカを吹かせてみたり。

レコーディングの作業中にトンチンカンなアドバイスばっかり連発するもんで、レコーディングが滞り、その度にわれわれは聞こえないふりをするので必死でした。

でも今思えば、全部冗談だったんだよな。

勝新太郎 → 石原裕次郎

ほんとに、生きてるときも思いやりがあったけども、死んで肉体がなくなっても、この魂が…
この写真の顔が、たいへん楽にさしてくれて…。
悲しい葬式じゃなくて、なにか楽しい、と言っちゃいけないんだけども、ああ…
なにか非常に、最高な葬式にめぐりあったような気がする。

谷川俊太郎 → 武満徹

武満、君が返事をしてくれないから、ぼくは君に話しかけることが出来ない。
君の沈黙と測りあえるほどの言葉をぼくはもっていない。

小林秀雄 → 中原中也

あゝ、死んだ中原
僕にどんなお別れの言葉が言へようか

君に取返しのつかぬ事をして了つたあの日から僕は君を慰める一切の言葉をうつちやつた

あゝ、死んだ中原
例へばあの赤茶けた雲に乗つて行け
何の不思議な事があるものか
僕達が見て来たあの惡夢に比べれば

阿久悠 → 久世光彦

久世光彦が死んだ。
それは得難い人を失ったということよりも、もっともっと切実な、ぼくの中の貴重な証人に突然去られた思いで、ぼくもまた一部死んだのである。

そう、久世光彦は最大の証人だった。
ぼくもまた、彼の証人だった。

マドンナ → ジャンニ・ヴェルサーチ

ジャンニ、これから寂しくなります。みんながあなたがいないのを寂しく思うことでしょう。

でも私には、はき慣れたヴェルサーチのジーンズのポケット一杯に思い出があります。それはどこにも消えてなくなりはしません。

パリス・ジャクソン → マイケル・ジャクソン

お父さんはわたしたちが生まれたときからいままでずっと最高のお父さんでした…
パパ愛してる

坪内祐三 → ナンシー関

私を含めてたいていの物書きは補充がきく。
しかし、彼女のあとを継げる者は誰もいない。
(中略)ナンシー関のいない日本なんて。

加藤茶 → いかりや長介

いきなりそっちから「全員集合!」と言われても俺たち4人は集まれないからね。
たぶんそのうち本当に「全員集合」になるかもしれないけど、その時はやっぱりまた向こうでコントをやろうよ。

草野心平 → 金子光晴

これは死んだんぢやあない。昼寝だ。永遠に昼寝にはいつたんだと思ひました。
それにしても月桂樹の葉つぱ位、その眠りの額におきたいな、ともふと思つたのですが、そんなものない方があんたらしくサツパリしてゐていいナ、と思つたのです。嗚呼。

アントニオ猪木 → 三沢光晴

不謹慎かもしれないが、レスラーは皆、どこかで死に場所を探しているところがある。リングの上で死ねたら最高と思い、やっている。

男として最高の場所で旅立たれた。お悔やみを申し上げたい。

マイケル・ジャクソンは世界中の人々を魅了するポップスターでありながら、1人の父親として穏やかな時を過ごしたはずだ。だからこそ、娘のパリスは初めて公の場に登場し、世界に向かって、「1つだけ言いたいのは……」と訴えた。誤解を受けがちなマイケルの「本当の姿」を語らずにはいられなかったのだ。

私たちは、思い描くようなピースな臨終を迎えることができるとは限らない。むしろ、願いが叶うことのほうがはるかに少ないはずだ。もう一度、想像してほしい。