Wear

Wear

着る

学生・渡邉基吉が語る古着と私。古着を研究しデザインに生かす

どんな服やカルチャーが響くかは人によって違う。古着好き、といっても実にいろんなタイプがいるものだ。着倒す、愛でる、再生、研究、収集。古着が生活に溶け込んだ8組の個性派たち。古着ワールドは無限なり。

Photo: Ayumi Yamamoto / Text: Shigeo Kanno

デザイナーを目指して
古着から学ぶ

ファッションデザイナーになる夢を諦め切れず、一度就職したアパレル会社を退社し、現在はファッションの専門学校に通う渡邉基吉さん。彼が作る服に取り入れるのは、主に80年代のメンズ古着のディテールだ。

「最初は、江戸時代とか古い和装を勉強していました。徐々に現代に近づいてきて、自分の興味があるものが80年代のものだと気づきました」

彼がデザインするのはレディースの服。最初にするのはビジュアル探し。そして色のイメージを決め、素材、トワルを使った立体研究、デザイン画の制作という工程を順に行う。
その過程であえてメンズ古着のディテールや形をミックスしていくのが彼なりのやり方。古着のシャツやスエットを部分的に解体し、使えそうなパターンやディテールを探し出す。

「コム デ ギャルソンやマルジェラの古着は特に参考になりますね。それらが年代ごとに揃う町田の〈feed〉や原宿の〈カメレオン〉によく行きます。今はウェブの画像検索でも探し出せますが、やっぱり実物に触れてみたいですからね」

古着から着想を得るのはファッションデザインの王道だが、新しい感性と古いものをバランス良くミックスできるかは、デザイナーの腕次第。

「すべてが実験段階ですが、古着の面白いディテールを探したり、シルエットを見つけたりする作業は新鮮なんです」と熱く語る渡邉さん。卒業後、夢のファッションデザイナーになる道を目指して、彼は今日も古着の研究に勤しんでいる。

学生・渡邉基吉
古着のスエットやデニムを解体してディテールを研究中。右の壁に貼ってあるイメージビジュアルとデザイン画を基に制作したのが、左のトルソーに着付けた服。