古着を通じて深まる
父と息子の絆
待ち合わせ場所の有楽町がざわついていた。
クラシックすぎるタイドアップにカンカン帽を被り、ステッキの代わりに細巻きの傘。外国人旅行客が「東京ヤバイ!」なんていう言葉を添えてインスタにUPしていると容易に想像つくが、東京ではない。阿部さん親子が“ヤバい”のだ。
ただ、2人がこのスタイルに辿り着くまでには紆余曲折あったようだ。高大さんの古着の芽生えは18歳。
「原宿の美容専門学校に入学するや“阿部って普通だな”って友達の一言にカチンときて。それから自分探し。父のクローゼットをあさり50年代の格好で街を歩きました」(高大)
その後、22歳の第2フェーズで爆発!BRUTUSの創刊2号「親爺たちの時代」。
そこに掲載されていた戦前の着こなしが、高大さんの目にはニューウェーブに映り「これだ!」とスイッチON。父に髪形を七三にしてもらい、美容から理容に。
そこから猛ダッシュで30年代を掘り下げ、古着屋行脚とインターネットを駆使して今に至る。興味深いのが親子のスタンスの違いだ。直感派の敏之さんに対し、高大さんはディテールを徹底的に調べ上げる理論派。
父もその研究ぶりに頭が下がるようで、「最近は教えてもらうことばかり。僕は50年代好きなので毎日開襟シャツですが、こういうスーチングは全部息子からの影響です」(敏之)
父から息子へ。息子から父へ。古着は単に服としてだけでなく、2人の関係を密に結ぶコミュニケーションツールでもある。