信頼できる目利きがいる器の店。愛知〈MATOYA〉

旅の目的地になる、魅力的な器の店が増えている。BRUTUSが注目したのは信頼のおける目利きが営み、店頭に立つ現代器作家のギャラリー&ショップ。彼らは、今どんな80〜90年代生まれの新世代作家に注目しているのか?器のこと、作家のことを聞いてみよう。

illustration: Yachiyo Katsuyama / photo: Satoshi Yasukochi / text: Hisashi Ikai / text & edit: Ai Sakamoto

器の佇まいを際立たせるこだわりのディスプレイ

徳川家康が生まれた愛知県の岡崎城。その城跡が残る公園からすぐの場所に〈MATOYA〉はある。店主の的山(まとやま)篤史さんは、商社勤務を経て、カナダにしばらく滞在した後、2019年に自身が生まれ育った岡崎の町でギャラリーをオープンした。器のみならず、オブジェやアートまで、幅広いセレクションを行う審美眼は、業界でも注目される。

「置いただけで、場の雰囲気や印象が変わる。そんな存在感がある、美しいものが好きです」。そう話す的山さんが今薦めるのは、安藤里実。滑らかに踊るような、有機的な形をした器を手がけるガラス作家だ。優雅に波打つ曲面が光を反射し、見る角度に応じてさまざまな表情を覗かせる。手に取ると程よい厚みがあり、安心して使える器だ。

展示作品や企画展の内容に応じて、毎回替わるディプスレイも秀逸。例えば、テーブルに対して、あえてオーバーサイズにカットしたファブリックをたわませた状態でアレンジしたり、編組品作家・渡部萌とともに制作したロープ編みをラックの棚板代わりに使ったりなど、空間構成を眺めるだけでも十分に楽しめる。

愛知〈MATOYA〉オーナー・的山篤史
店内のディスプレイを細かに調整する的山さん。にこやかに器を眺めるその表情から、作品に対する愛情を感じる。