古物をリスペクトする作家と、骨董を広く伝えるために
100年を超えて築年数不詳という京町家に並ぶのは、佐賀県唐津や滋賀県信楽、岐阜県多治見などで作陶する現代作家の器。村山健太郎、谷穹(たに・きゅう)ら扱う作家は20名に満たないものの、店主・下西幹さんがこの先も長く一緒にと思う作家にブレはない。「好みは古いものに敬意を払った作り手のもの。派手さはないけれど使ううちに手放せなくなる」という。
松葉勇輝も深く信頼を寄せる一人。「須恵器や土器、古瀬戸といった古陶磁をそのまま写すのではなく、自分なりの解釈を加えて出来上がるものには、今のエッセンスが入っています。経筒をミニチュア化した作品は、薪窯の灰で表情が大きく変わる。楊枝入れとして求められる方もいて、食卓に置かれた姿を想像すると豊かな気持ちになります」と下西さん。
それらと取り合わせてもすっと馴染む古い器は、桃山まで時代を遡るものから普段使いの手頃なものまで、好きという感覚だけを大切にセレクト。若い世代にも焼き物や古物を知ってほしいと願う、下西さんの静かな情熱が凝縮する場所だ。