BRUTUS
どういうときに買いますか?どんな場所で買いますか?
伊藤徹也
やっぱり作家や作者に会ったときというのはいいですよね。お酒でもなんでもそうだと思いますが、蔵の人を思ったり、この森山窯のうつわなら森山(雅夫)さんのことを思ったり。ワインでもなんでも、皆そうですよね。いろんな思いが詰まるから、お店よりも実際に行った先で買う方が好きですね。
BRUTUS
どんなうつわが好きですか?
伊藤
黒い皿が多いですね。意外と白っぽいものは少なくて、好みでいうと黒ですね。白いお皿は「とても使いこなせない」という感じなんです。撮影しているとやっぱり料理家さんってお皿の上に絵を作るチカラがすごいですよね。白い背景の上に料理を盛るわけだから。黒いと、なんだか雰囲気でごまかすことができる気がする(笑)。料理の素人は、黒とか茶色とか濃い色のうつわの方が、美味しそうに見える気がします。白いお皿なんて、まだ僕には早いなあ。料理家さんは、すごいと思いますよ。
BRUTUS
記憶している中で、最初に買ったうつわは?
伊藤
雑誌の取材で島根県の石見銀山に行ったときに、まわりにある窯をまわったんです。ちょうど世界遺産に登録された年で。それ以前ももちろん食器を買うことはありましたが、「ガチ」で買ったのはそのとき訪ねた出西窯と森山窯です。森山窯では、はじめて登り窯も見ました。入門らしい入門ですよね?この島根の旅から、取材に行った際には、近くにある窯に行くようになりました。実際、好きになってくると、そういう撮影も増えました。
BRUTUS
買うときに、何か思い浮かべますか?
伊藤
いちおう、考えますね。これはおひたしだなとか。基本は酒のツマミです(笑)。夏野菜を盛ったらいいだろうなとか、食卓の上に並んでいる姿を妄想して買うことが多いですね。皿と皿の相性までは、考えませんが。うちは夏でも鍋をするんですね。回数を数えた年があって、年間100日は超えていました。鍋って、湯気を囲むというか家族団らんというか、よくないですか? 鍋をやっていると家族という気がするんです。
4人家族なのですが、娘たちが好きだったら、持っていってほしいなと思っているんです。実家で使っていた皿って、なんだかんだ思い入れがありますよね。これは僕が子供の頃から使っているシチュー皿なんですが、名もないものなんですけど、ずっと使っていて。そんな感じで、娘たちがいつか持っていってくれてもいいかなと思っています。
出西窯の丸鉢
2007年に取材で訪れた際に購入した、柳宗理ディレクションシリーズ。「我が家の鍋の定番です。ひとつ割れてしまって、のちに買い足しました。黒がなくて、白になってしまいましたが」。いちばん上の白釉のものを〈ビームス・ジャパン〉で買い足した。
森山窯の角鉢
同じく取材で訪れた際に手に入れたもの。「欠けたりもしていますが、それも味でいいかなと思っています。渋すぎるかなと思ったら、食卓ではそんなことはない。頑丈ですよね、もう10年以上使っています」。
多治見のデッドストック皿
恵比寿の家具店〈COMPLEX UNIVERSAL FURNITURE〉で購入した、岐阜県多治見の倉庫から出てきたという、デッドストックの食器。海外輸出用に生産されたもののよう。スリップウェアのような模様が特徴的。
実家にあった古いシチュー皿
実家で使っていたものを、ご両親から譲り受けた。スタッキングもできる。昭和ミーツ北欧のような可愛らしさがある。「これだけは実家からかっぱらってきたんです(笑)」。
掛谷康樹さんのうつわ各種
世田谷の〈工芸喜頓〉で購入した。店主・石原文子さんのお宅に撮影でお邪魔したときに掛谷さんのうつわがあり、「練り上げ」という技法からなるグラフィカルな雰囲気に一目惚れした。後日、〈工芸喜頓〉で合計17枚を購入する。「これだけあれば一生楽しめます(笑)。あたらしい、鍋の定番になりそうです」。