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写真家・木寺紀雄さん愛用のうつわ6選。知り合った作家さんを思い浮べながら使う

平野さんと同じ日の夕方に、木寺紀雄さんのアトリエ兼スタジオに。用意していただいたうつわのうち、多くが飯碗(茶わん)。とにかくたくさんお持ちなので、何かテーマがないと選びきれない。ということで、今回は作家の陶器を中心に、お話を伺った。
前の記事「写真家・平野太呂さん愛用のうつわ6選。ちょっと土を感じる、旅の思い出の品々」も読む。

photo&text: BRUTUS

BRUTUS

どういうときに買いますか?どんな場所で買いますか?

木寺紀雄

仕事柄、料理家さんや作家(陶芸家)さんと接することが多いので、うつわは欠かせないんですよね。作家さんの工房にも行くことがあり、その場で購入することが多いです。自分の場合は「知り合うと欲しくなる」んです。作り手の人柄と顔と、作る作品にもちろん惚れるんですけど、会った人が「いい!」となると、人が気になりだす。

いままでの仕事もそうなんです。(写真集を作った)リサ・ラーソンさんもそうだし、柚木沙弥郎さんの場合もそうです。人に影響を受けてしまい、その人がいいとか集めていたりするものがあると、ドンドンつられて、興味を持ち始める。今回はふだん使っている、作家の顔が見えるうつわを選びました。これを使っているとその人のことを思い浮かべるし、作ったときの気持ちも想像できるし。

BRUTUS

どんなうつわが好きですか?

木寺

今回、実は全部、茶わんにしようかと思ったんです。他にもあるんですが、茶わんがとにかく好きなんです。いくらあっても繰り返し使えるし、収納するときも重ねておけばいい。「今日はどの茶わんで、ごはんを食べようかな」という楽しみがありますし、気に入ったものは必ず買いますね。それぞれに思い出があるので、これが一番ということはないんですけれど。

BRUTUS

買うときに、何か思い浮かべますか?

木寺

多少、食のことは考えますけどね。このうつわだったら、あれをいける、あれを食べられるという、食べ物のことは考えますね。

作家さんを取材して、「買わないで帰るわけにはいかない」という気持ちもあるんです。その人のことをもっと知りたいですからね。だから取材に行く時点で、かばんは荷物が入るように空けて行きますよ。海外はもうトランクを半分空けていますから(笑)。若い方だと、1〜2個買ったくらいでは大した応援にはならないかもしれませんが、応援したいですからね。

BRUTUS

荷物になりませんか?

木寺

柚木さんのお宅を見て、買わないという制約を作りたくないと思ったんですね。旅先でいいと思ったものには、もう2度と出会えないと思うから。で、買って帰ってきて、家で困ったりもする(笑)。でも柚木さんを見て「これでいいんだ」と思った。また新たな場所を作ってもいいわけだし。このアトリエにも、家から溢れ出たものがたくさんあります。

額賀章夫さんの飯碗

渋谷JINNAN HOUSEにある〈茶空〉で出会って購入した。底面に入っている「N2020」の文字も気に入っている。「額賀さんはとても素敵な方で、この茶わんでごはんを食べると、『自分もああいう人にならんといかん』と思うんです」

宮城正幸さんの飯碗

沖縄県・南城市で作陶する〈miyagi pottery〉宮城正幸さんの飯碗。「沖縄の陶器の感じもあるけれど、違う感じもある。シャープでスカンとしていいですよね」。もう一回り大きい飯碗も所有している。「この飯碗で白米を2杯食べるか、大きいほうで1杯にするか、悩んだりもします(笑)」

浜名一憲さんの飯碗

浜名さんのご自宅に取材に行った際、食事をつくってくれたことがある。そのときに使わせてもらった飯碗と似たものを、富山のセレクトショップ〈CARGO〉で販売していて、即購入した。黒とネイビーの混ざったような色合いが気に入っている。「ゴツゴツしていて、土を持って食べているような気持ちになります」。

〈リーチポタリー〉のボウル

イギリスのコーンウォール州セント・アイヴスに、画家アルフレッド・ウォリスの墓を撮影に行った際に、立ち寄ったリーチポタリーで購入した。納豆ごはんや卵かけごはんを食べるときに、よく登場するそう。

市川孝さんの耐火皿

木寺さんが「今すごく気になる」という作家さん。陶芸家であり茶人でもある。この皿は、直接火にかけることができる。オカズデザインが営む器料理店〈カモシカ〉の展示で購入。「パスタもいけるし、スープもいける。カレーもいける。市川さんはこれに直接茶葉を入れて、お茶を淹れる。使い方を知って、オーッ!となりました」。

グスタフスベリ〈JANG〉のボウル&プレート

親交のあるリサ・ラーソン氏がスウェーデンのデパート〈Ahlens〉のためにデザイン提供した食器シリーズ。〈JANG〉は、JAPANとYOUNGを掛け合わせた造語のようだ。スウェーデンの街のリサイクルショップにB品として残っていたのを見つけ、当時数百円で買った。2001年ごろ。