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フードデザイナー・中山晴奈の忘れられない味。長野県〈ふるさと体験館・食堂四季〉のすんきとうじそば

「人生変わっちゃったかも」。そう思えるほどの食体験を持っている人は羨ましい。その味への再会を思い浮かべながら過ごす日常は、すでに十分幸福なはず。フードデザイナー・中山晴奈さんが旅先で出会った、特別でかけがえのない一皿。その思い出を存分に語ってもらった。

illustration: Hagie K / text: Ikuko Hyodo / edit: Ichico Enomoto

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素朴なのに、旨味が爆発!
木曽の食文化が生んだ蕎麦

すんきとうじそば イラスト

すんきは、塩を一切使わずに赤カブの葉を乳酸発酵させる、長野の木曽地域特有の漬け物。その歴史は古く、今も残っている無塩の漬け物は日本でここだけといわれています。こうした木曽の食文化を広める活動に関わって、通っていたときに出会ったのが「すんきとうじそば」。

すんきを漬ける冬に食べられる一品で、刻んだすんきと漬け汁を鉄鍋で煮込んだつゆと、ざる蕎麦が出てきます。そして蕎麦をとうじカゴという竹カゴに入れて、温かい鍋でしゃぶしゃぶして食べます。具は基本的にすんきのみなのですが、これが震えるほどおいしくて!

塩を使わない植物由来の乳酸菌が生み出すアミノ酸は、カツオ節のような海のだしと出会うと旨味が倍増するんですよね。塩で食べてもおいしいくらいの十割手打ち蕎麦を、そんなとんでもないつゆにつけて食べるので、口の中で旨味が爆発している感じなんです。

ふるさと体験館〉では、すんき漬け講習会を開催しているほか、名人が漬けたすんきを購入することもできます。どちらもかなり人気です。

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