Eat

Eat

食べる

温泉本作家・岩本薫の忘れられない味。山梨県〈増富温泉・不老閣〉の夕食

「人生変わっちゃったかも」。そう思えるほどの食体験を持っている人は羨ましい。その味への再会を思い浮かべながら過ごす日常は、すでに十分幸福なはず。温泉本作家・岩本薫さんが旅先で出会った、特別でかけがえのない一皿。その思い出を存分に語ってもらった。

illustration: Hagie K / text: Ikuko Hyodo / edit: Ichico Enomoto

連載一覧へ

ラジウム泉効果で胃腸も快調!
温泉込みで味わう旅館メシ

ハギーK イラスト

温泉旅館の豪華すぎる食事が好きではなく、温泉街で古い食堂を探します。そして『孤独のグルメ』の井之頭五郎のように、店構えなどから直感で決める。増富(ますとみ)温泉は良質なラジウム泉で有名だけど、湯治場だったからか宿の外に食べるところがほとんどない。

それで旅館〈不老閣〉に食事付きで泊まったのですが、毎年行きたくなるほどの感動体験でした。単に料理が素晴らしいだけでなく、ラジウム泉は胃腸にすごくいいんです。鼻から呼吸して、飲泉もして……正直これはまずいけど(笑)、交互浴をして、気がつけば3時間。

胃腸の調子がどんどん良くなり、ベストコンディションになったところで夕食の時間。野菜や発酵食品が中心で、ボリュームもちょうどいい。メインは豚しゃぶでしたが、つけダレはなんと桃のソース。こんな洒落たもの、普段は絶対に選ばないけど果肉も入っていて、まあ旨い!これぞラジウムと旨いメシの相乗効果!食事の良さは味だけでないと思っていましたが、〈不老閣〉はそれが体現されている場所ですね。

連載一覧へ