花のポテンシャルを引き出すセンスの虜に
〈chibi〉にある植物は、フェミニンやナチュラルといった一般的なかわいらしい花のイメージとはベクトルが違う気がします。店内に一歩入った途端、一つ一つに焦点が合うくらい、それぞれが主張していて主役級でありながら、決してぶつかり合っていない。かといって商業的に媚びてもいない。
その独特のミックス感からは、店主の芳賀規良さんが好きなものだけがここにある、ということが伝わってきます。芳賀さんがアパレルショップや展示会などでの空間ディスプレイを多く手がけていることも影響しているのか、花材の選び方や組み合わせ方にどこかダイナミックな印象がある。前を通りがかって初めて入った瞬間から「この世界観がすごく好き!」と惚れ込んでしまいました。
とにかく扱っている花の質もすごくいい。生けているうちに根が生えてきて土に植えたこともあるくらい、生命力の強いものが揃っています。以前、仕事で「萎れたようには見せたくないけれど、生き生きしすぎてるとダメ」という難しい相談をしたときも、絶妙な塩梅で調整してくれました。
私は彼のことを、花屋というよりも「表現者としての手段がたまたま花だった人」だと思っているんですが、それは花屋としての基礎がしっかりあるからこそ叶うこと。誰よりも植物のことを熟知しているうえ、どんなシーンで使いたいのか、どんな人に贈るのかといった意図も的確に掴み取ってくれるので、頼り切っています。
私も花は好きだから自分で選ぶこともできますが、それだと自分のセンスが限界。ここにお願いすれば想像以上の意外性や驚きがあるのが嬉しくて。だからスタイリングの仕事も人に贈るときも必ず来て、そのたびにその表現力に感動しているのです。