編集者・安藤夏樹が通う、目利きの店。渋谷〈Archive Store〉

店の雰囲気、品揃え、店主やスタッフの人柄。思わず足を運んでしまう理由は人それぞれ。 編集者・安藤夏樹さんに聞いた、“信頼できる店”とは。

本記事も掲載されている、BRUTUS『信頼できる店の探しかた』は、2023年4月1日発売です!

photo: Sana Kondo / text: Shiori Fujii / edit: Chizuru Atsuta

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接客に世界を読み解くヒントが隠された古着屋

店長の鈴木達之さんが、世の中に散在している古着を一つの考えのもとに集めてアーカイブとして提案したのが〈Archive Store〉。

〈メゾン・マルタン・マルジェラ〉〈コム デ ギャルソン〉〈ラフ シモンズ〉といったデザイナーズブランドの1980~2000年代のものが柱となっています。僕は当時、リアルタイムではそれらのブランドの服をぼんやりと眺めていたくらいで着るに至らず、2010年頃から古着として興味を持ち始めました。

ただし、まだ世にヴィンテージとしての価値が認められていなかったから、古着屋やネットオークションなどで探して、偶然見つけたものを買うしかなかったんです。それが鈴木さんの視点によって一つのジャンルとして成立した。

僕は編集者として、たくさんの情報のなかから拾い上げたもので特集や企画を組み、それによって人が気づかなかった存在を際立たせ、注目させることを使命だと思っています。同じことに鈴木さんは挑戦しているんですよね。そこに心惹かれて、初めて訪れたときから「この店のコレクションでいつか本を作りたい!」と話しています。

僕はプロフェッショナルな販売スタッフとの会話に、ものを買う以上の価値を感じています。隣に並んでいるものとどう違うのか、この商品が作られた背景や意図とは。そんなことを話してくれる彼らは、いわば知恵袋のような存在です。だから僕はわざわざ店に買いに行く。

鈴木さんと服を前に繰り広げる雑談からは、当時の社会背景やデザイナー同士のつながり、流行っていた音楽や映画などのカルチャー、時代の空気感といったことまで見えてきます。過去に消費してきたものたちが、今、体系化して見直すと一つの文化史になっているってすごく面白いですよね。

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