林道雄(スタイリスト)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
バランスやルールを崩しながら再構築していくこと。僕のトラッドの初体験は中学の学生服。縫製の仕事をしていた母親がカスタムしてくれて。標準制服制度というものを嫌悪していた自分にとって、それを崩すことに面白さや美しさを求めた、初めてのオーダー服でした。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
爆笑問題の太田光さん。ぱっと浮かびました。芸風含め、かなり計算されているように思えます。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
伝統を重んじ、読解し熟知し、かつそれらを崩してバランスを保とうとする姿勢。この2つは表裏一体の等価値。
VERDY(アーティスト)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
野村訓市さんが何年か前に雑誌に書いていた「都会の戦闘服」という言葉が心に残っています。僕はその言葉を体現するアウターが好きで、最近は〈ジュンヤ ワタナベ マン〉と〈カーハート〉のコラボレーションジャケットを買いました。ブラックカラーでポケットが多いデザインが好き。ステッカーやペン、鍵、財布などを分けて入れられる利便性がいい。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
〈バウンティー ハンター〉のヒカルさんです。バンドTシャツとスニーカーの色を合わせるスタイルもヒカルさんの影響。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
自分のキャラクターを作るアイテム。その人に欠かせないものこそ、トラッドなんだと思います。
平野史也(テーラー)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
本物でシンプルかつ洗練されており、いつの時代でも着たいもの。自分らしさとイギリス感があるもの。アイテムならば、スリーピーススーツ、紺ブレとローファー。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
エドワード8世。現代だとチャールズ3世、〈TOKITO〉のデザイナー吉田十紀人さん。常に時代感と自分のスタイルがある人はカッコいいですよね。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
自分にとっては、金太郎飴のようなもの。どんな洋服を着ようが自分のスタイルがあり、それを時代に合わせてアップデートしながら、自分らしさが変わらない、普遍的な格好よさだと思います。
Jason Jules(ライター、クリエイティブディレクター)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
私のワードローブはトラッドな服であふれているが、それをあえてトラッドではない方法で着るようにしている。それがクラシックな服の醍醐味だと思う。そうすることでできること──少なくともそう感じることができるのは、鏡を見る時に、ほかの誰かと自分を比べたり、ほかの誰かのルックを真似したりすることがないということだ。
そしてトラッドの魅力は、さまざまなタッチポイントがあることだと思う。みんなに理解されるようなユニフォームとして提供することもできるが、それを個性的に見せることも可能。完全に縛られることはないんだ。ブランドと個人の両方がこの方法でアプローチできることが、トラッドが伝統的でありながらアップデートされ、コンテンポラリーでもあり得る理由の一つだと思う。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
タイラー・ザ・クリエイターやアンドレ3000、60年代半ばのマイルス・デイヴィスのような人たち。彼らがみなミュージシャンであることは偶然ではない。彼らは本能的にクリエイティブな観点から日々の生活にアプローチしているから、トラッドな服をさらにエキサイティングに表現できるんだと思う。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
ラッド=トラッドと定義している。ラディカルトラッド、伝統にとらわれないトラッドだ。
服部昌孝(スタイリスト)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
クラシックと現代の融合。シルエットは今っぽくても、クラシカルなニュアンスが入っているとか、個人の粋な部分が表現されるスタイル。ドレスダウンよりカジュアルアップで、クラシックなものを織り交ぜる。最近でいえば、クラシックなジャケットやコート、ブルゾンにキャップが僕のトラッドスタイル。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
ジャケット、シャツ、キャップのスタイリングでお馴染みの山本晋也監督。僕自身は以前ニットキャップを被っていたのですが、2021年頃からは、趣味の車に服のスタイリングを合わせるようになってキャップに。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
トラッド=気分によって進化する自分流スタイル。着るものや着こなしで、人となりがわかるのがトラッドの魅力。
矢口憲一(ヘアメイクアップアーティスト、美容師)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
私の店〈駿河台 矢口〉がある神保町には、昔ながらのトラッドが感じられる店やスタイルが多いように感じます。サブカルチャーの発信地であり、古本を筆頭に雑多な中に文化が玉石混交に集まっている魅力的な場所。そして、クラシックな装いを好む人々が集う場所でもあります。私自身、音楽とアートからファッションやヘアスタイルの着想を得ることも多いですね。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
詩人のアレン・ギンズバーグ。白髪混じりの髪の毛に特徴的な眼鏡、そしてスーツスタイルがクール
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
過去を学び、これからも作り続けていくもの。
平野太呂(写真家)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
古くさくならないところ。象徴するアイテムがあるとしたら、ポケットTシャツ。まだ大人になる前、80年代のアメリカ映画を観ていた時に、このアイテムを着た登場人物が出てきて驚きました。当時の僕にとってTシャツは、肌着という印象だったので。それが自分がトラッドを自覚した瞬間だったように思います。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
俳優のトム・クルーズ。1986年に公開された映画『トップガン』が特に印象深く残っています。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
いつの時代にもあって、決してなくならないもの、存在。
高相朋基(〈VELVET〉オーナー&バイヤー)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
形は普遍的だが、デザインに強さがあり、オリジナリティあふれる特徴や色気のある洋服を軸とすること。自分らしさをわかりやすく表現できるのが魅力。自分では、感覚的にコーディネートしているのでルールやこだわりはないが、あえて取り上げるなら、コントラストをつけるようにしている。例えば、ミッキーのスエットに革パンとか、ボロのジャケットにスラックスという感じ。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
選べませんでした。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
自分だけにしか持てない、扱うことのできない武器。
山下英介(「ぼくのおじさん」編集人)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
誰かに誇示するためのファッションではないところ。トラッドな装いは、お金持ちに見えるわけでも、女性にモテるわけでもない。ただ自分が自分らしくいられるスタイルです。トラッドという言葉が和製英語であることもポイント。ボタンダウンシャツもブレザーもチノパンも、アメリカの合理的精神が生み出した実用品であり大量生産品ではありますが、1950〜60年代に青春を過ごした戦後世代の日本人はそこに物語を見出し、雑誌などのメディアが独自の文化として成長させました。
現在はそんな日本発のトラッドファッションをアメリカをはじめとする欧米人が参考にすることで、また新しいファッションが生まれる時代。そんな和製トラッドの物語に惹かれています。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
株式会社文藝春秋 現取締役の新谷学さん。“文春砲”で有名な名物編集者はアメリカントラッドを語らせたら日本で一番詳しい方でもある。単なるファッションではなく、一着の服を何十年も愛し抜く姿勢が素晴らしい。装いにも人格にも確固たる軸があるからこそ、判断が決してブレないんだろうなと思います。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
ライナスの毛布みたいな存在でしょうか。心の拠りどころです。
小木 "POGGY" 基史(ファッションディレクター)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
デザイナーズの服はそのデザイナーの色になりますが、着る人によって見え方が変わるのがトラッドの魅力だと思います。僕のイメージするトラッドは、ポルシェの911、リーバイス®の501、ラコステのL.12.12などです。どれも僕が若い時からすでに存在していて、今でも圧倒的な人気があるということが驚きです。自分のスタイリングでは、ベーシックなものだけに人と同じようには着ないように意識しています。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
実業家の白洲次郎。今で言えばラッパーのタイラー・ザ・クリエイター。ヒップホップアーティストの中でも、日本人に馴染み深いトラッドなブランドを新しい形で身に着けて、若者たちに影響を与えている面白い存在です。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
クラシックは点、トラッドは線です。どんなに良いものでも、その時代で終わってしまえばクラシック(点)。上の世代が若い世代へ伝えたい、若い世代が古き良きものを学びたい、その点と点がつながる線がトラッド。これは、先輩から教えていただいた金言で、今でも忠実に意識しています。
岩井良太(AURALEE デザイナー)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
シーズンによって変わらない、その人だけのブレないスタイル。古びたり流されたりしないのが魅力です。自分が着るものに関して言えば、古着や新品を問わずカシミヤのセーター。初めてカシミヤセーターを買ったのは、22、23歳の時。ブランドは失念しましたが、古着屋でミドルゲージぐらいのベージュのセーターを買いました。それから、ずっといろいろなカシミヤセーターを愛用しています。
今の僕の定番アイテムは、〈オーラリー〉を含め、〈ポロ ラルフ ローレン〉〈ラコステ〉〈プリングル オブ スコットランド〉です。ちなみに、僕のこだわりは2つだけで、カシミヤは丁寧に扱いすぎず、雑に扱って気軽に着る(毛玉ができても気にせずそのまま)。スタイリングには、古着のダックパンツやデニムなどをカジュアルに合わせる、というものです。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
作家のフラン・レボウィッツと映画監督のマーティン・スコセッシ。どちらも感覚的にトラッドだと思っています。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
シャツやジャケットみたいなことだけじゃなくて、シーズンによって変わらないその人だけのブレないスタイルのこと。