児島晋輔(KAPTAIN SUNSHINE デザイナー)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
伝統的で、自由であること。不変的でありながらも、その時々のムードを合わせることができるのが魅力だと思います。自分の中でトラッドだと思っていれば、その範疇(はんちゅう)の中で新しい発想や考えがどんどん出てくるから。グレーフランネルのスーツ、ブルーデニム、サイドゴアブーツ。自分の中で核となるアイテムを古着と組み合わせて着こなすことが自分なりのトラッドスタイルです。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
ケーリー・グラント、ウディ・アレン、ポール・ウェラー、ジャン=ポール・ベルモンド、白洲次郎。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
国境を越えて自由に選択し、学び、そして進化を続けること。
中田慎介(Unlikely デザイナー)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
アメリカントラディショナルに、重ね着の要素を足すのが自分らしいスタイル。ネイビーブレザーの中にウィンドブレーカーやダウンベストを重ねたり、革靴にスポーツソックスを合わせたり。根底にあるトラッドのルールを守り、変化球を加えるのが自分にとっての定番です。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
憧れはダスティン・ホフマン。映画『卒業』で、彼がツイードジャケットを着た姿が印象に残っています。サイズバランスを含めて新鮮で、今も目に焼き付いているぐらい。彼からアイビールックを学びました。アメリカントラディショナルを土台に持つ現代アーティスト、トム・サックスの独自解釈も格好いい。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
トラッドとはクラシックだと思います。代々受け継がれる伝統的なアイテムを基に構築されたスタイル。ルールがしっかりと決まっているからこそ、時代の流れに応じて小さな変化が生まれていっている。変わらないものがあるから、新しいものがフォーカスされるんです。
島田裕生(〈BARBER BOYS〉理容師)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
全身ヴィンテージで当時と同じように着ることはトラディショナルではあるけど、ファッションではないのかなと思います。1950年代のアイテムでも、どこか現代に通ずるような着方を意識することがトラッドなのかと。例えば、伝統的なスタイルに対して、少しだけ自分の色を付け加えてみたり。これは理容師としてお客さんに提案するヘアスタイルにも言え、最も大切にしていることの一つです。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
写真家のブルース・ウェーバー。彼の写真には、時代を超える格好よさを感じます。古き良き時代をリスペクトし、現代に昇華させている部分も好き。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
ミニマルだけどディテール一つずつに意味がある服を作っていた1940年代から、その後栄華を極めた50年代のアメリカンスタイル。僕の一番好きな時代や国、そして軸となる部分です。
KENSHIN(ヘアスタイリスト)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
信頼性や清潔さが表れる洋服のスタイル。洋服が人に与える影響って大きいと思うんです。その中でもトラッドに代表されるアイビースタイルは、多少着崩しても知性が失われず、格好よく見せられるファッション。今はジャンルにとらわれない自由な着こなしが主流ですが、トラッドなアイテムを一つ持っておくと深みが出るんですよね。
自分にとってはボストンタイプの眼鏡。そのきっかけは、中学生の頃に好きだった画家のノーマン・ロックウェルが描いた「Triple Self−Portrait」という自画像。サックスブルーのシャツにダボッとしたチノパン、そしてボストンタイプの眼鏡を掛けていた姿に憧れました。度入りの眼鏡を掛けるために、わざと暗いところで本を読んで視力を下げようとしていたのも懐かしい思い出です。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
ジョン・F・ケネディ。子供の頃テレビを観ながら「大統領なのに公の場でサングラスとか掛けちゃうんだ!」と型破りなスタイルに驚いたことを覚えています。それでいて洗練されているところに、トラッドを感じます。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
エデュケートされた人が着るファッションスタイル。
柏崎亮(Hender Scheme デザイナー)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
トラッドの魅力は、洋服の歴史や成り立ちやコンテクストを良くも悪くも大事にしていることだと思います。自分自身は、スタイルについて難しく考えていないので、ほぼノールールです。その中でどうしても見出すのであれば、自分の感覚的な嗜好性がファッションの文脈的に許容されるのか、ほんの少し気にすること。もし、許容されないとしてもいいと思えば気にしません。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
感覚的ですが、映画監督の平野勝之さん。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
トラッドという概念自体が日本的な気がします。根づいていない、もしくは当事者的な文化ではないからこそ憧れ、嗜好する人が多いのかもしれません。
Olivier Saillard(J.M. WESTON アーティスティック・イメージ&カルチャー・ディレクター)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
トラッドなスタイルはファッショナブルというよりも、実用的な服装に忠実であることを意味しています。実際に私は10〜15年前からスタイルが変わっていません。
例えば、パリのモン・タボー通りにあるメゾン・ガブリエルに何本もオーダーしたパンツ。60年代の色褪せたカラーのヴィンテージネクタイ。私のワードローブに欠かせない香水、〈キャロン〉の《プール アン オム》。これらは、時代を超越し、流行に左右されないものです。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
1人に絞ることは難しいですがマルセル・デュシャンやニコラ・ド・スタール、ウィリアム・バロウズはシックでいてシンプル、それでいて恬淡(てんたん)とした服装なのが格好いいですね。私は芸術家たちの着こなしが大好きなのです。派手なロゴやモチーフよりも、まくり上げられた袖、かすれたパンツに心惹かれます。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
新しさと不変性の対比。ジャケット、シャツ、パンツなどのトラッドなアイテムは、時の痕跡を帯びれば帯びるほど、より高貴になっていくと思うんです。
Mr. SLOWBOY(イラストレーター)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
私はトラッドであることが「正直」「規則正しい」「クラシック」「信頼性がある」「楽しい」という意味を含んでいると考えています。単なる服装の話ではなく、そのスタイルを反映する価値観にも通ずるのではないでしょうか。“静かに際立つ”というのは矛盾した言葉に感じるかもしれませんが、それが私の目指しているトラッドの姿です。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
イラストレーターの穂積和夫さんと彼の著作『絵本アイビーボーイ図鑑』は、自分自身のファッションと芸術のスタイルに大きな影響を与え、どのようにしてトラッドスタイルが日本で生まれたのかを学ぶことができました。それから“ミスタークラシック”と呼ばれているデザイナーのジェレミー・ハケットもトラッドを語るうえでは欠かせない人物。彼は紳士としての日常生活のルール、プロトコル、エチケットに関して超一流。
その一方で、ファッションにおいては自由な発想の持ち主。懐古主義ではない、アップデートされたトラッドを重んじています。例えばジャケットの襟のボタンホールをあえてパッチワークにしたり。伝統を知ったうえで、遊び心を加えるプロフェッショナルです。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
伝統を尊重し、感謝するとともに、その歴史にとどまらずに進化し続けていくこと。
大貫達正(〈SANTASSÉ〉オーナー)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
英国的サヴィル・ロウのスタイルの中に米国的なデニムやカジュアルアイテムを混ぜたり、アメリカントラッドを主体にしながら仏国的なエスプリ感を表現したりするスタイルです。僕の場合、スタイリングには、トラディショナルな背景を持つブランドやアイテムを必ず取り入れます。
ブランドで言えば、英国の〈ヘンリープール〉や〈ジョンロブ〉、フランスの〈エルメス〉や〈シャルべ〉、アメリカの〈ブルックス ブラザーズ〉や〈オールデン〉など。トラッドは、人格を表現する最適な方法であり、それが魅力です。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
葉巻とサヴィル・ロウを代表する人物として政治家のウィンストン・チャーチル。エスプリ感あるフレンチトラッドを確立した人物として俳優のセルジュ・ゲンスブール。デニムをファッションに、トラディショナルへ昇華したきっかけの人物として俳優、音楽家のビング・クロスビー。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
人格を表現する一番の方法であることと、人としての判断基準を創る佇まいのようなもの。
Ouigi Theodore(THE BROOKLYN CIRCUS デザイナー)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
トラッドとはベースや土台を意味する言葉。基準となるものですが、必ずしも決められたルールで行う必要はありません。しかし、ルールを破るためにはルールを知る必要があります。個人的な解釈や進化の余地は常にあるべき。ベースを持ったうえで拡張や探求ができれば、もっと楽しくなると思います。そういう意味で即興と変化がテーマの、ヒップホップ、レゲエ、ジャズも、私にとってはトラッドなんです。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
人物ではないけれどいいかな?私に深く影響を与えたのは映画『クーリー・ハイ』。トラッドスタイルに興味を持つきっかけをくれた重要な作品です。ジェイソン・ジュールス著の『Black Ivy: A Revolt in Style』、それからスパイク・リーが作る映画の数々は、ブラックアイビー・スタイルへの関心を高めてくれた存在だよ。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
クラシックで、意図的で、規律正しく、非常に画一的で、歴史的で、どこか排他的かもしれない。しかし、私たちはそのイメージを変え、より包括的なものにしようと努力している。そうすればもっとトラッドが魅力的になると思いませんか?
金子恵治(ファッションディレクター)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
すべての基礎となるので、トラッドを知らずしてファションは語れないのでは?と思っています。ルールがあるからこそ型破りなことをする楽しさがあり、それこそファッションの魅力でもあります。アイテム選びも定番から少しずらしていき、そのうえで普通に見えるようにコーディネートするのが醍醐味。
この〈アルニス〉のダッフルコートは私にとってトラッドな一着です。パリの古着屋で見つけたのですが、極めてベーシックで〈アルニス〉らしからぬところに惹かれました。それから、〈ジョン スメドレー〉のクルーネックカーディガンや〈チャンピオン〉のハーフジップスエット、〈ジェイエムウェストン〉の「ヨット」に〈ルノア〉の眼鏡、〈カルティエ〉の18Kサントスブレスレットもマイ・トラッドなアイテムです。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
超正統派なトラッドを貫き通しているチャールズ3世。環境保護活動、伝統産業支援、一つのものをリペアしながら長く使い続ける姿勢など、ファッションを通り越し、人としてのスタイルが、完璧にトラッドを体現していると思います。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
伝統的なスタイルであり、メンズファッションの基礎。
中室太輔(ムロフィス代表、PRディレクターほか)
Q1
あなたの考える“トラッドなスタイル”について教えてください。
A1
セレクトショップの販売員をしていた20代の頃から、毎日トラッドなアイテムに触れ、勉強しながら出会ってきました。そのため、トラッドは“Traditional”の言葉の通り「伝統的」という意味で捉えています。ツイードジャケットやレジメンタルタイなど、明確にトラディショナルなものがあるアイテムを取り入れたり、本来のトラディショナルなスタイルを踏襲することが自分のルール。「ルールの中で楽しむ」というスタイリングへの普遍的な姿勢こそ、トラッドの魅力だと思います。
Q2
あなたが“トラッド”だと思う人物は誰ですか?
A2
ケーリー・グラント、グレゴリー・ペック、チャールズ3世、アラン・ドロン、セルジュ・ゲンスブール。
Q3
“トラッド”という言葉を、自分なりの言葉で言い換えてください。
A3
文化的背景を持った伝統的なスタイル。