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クサナギシンペイの語る〈ふじもと〉のロースカツ定食

あの時食べたこんなとんかつ。画家・クサナギシンペイによる味の記憶。

Photo: Kayoko Aoki, Tomo Ishiwatari, Kasane Nogawa, Kunihiro Fukumori, Hiroki Tsuji / Illustration: Naomi Tokuchi / Text: Hikari Torisawa, Yuriko Kobayashi, Koji Okano, Izumi Karashima / Edit: Keiko Kamijo

ふじもと(北参道)

トンカツ ふじもと
サクッとしたカツにかぶりつくと肉汁が溢れる。¥1,600

突然だがとんかつソース問題をご存じだろうか。運ばれてきた熱々のカツにソースを一気に回し掛けると衣がべちゃべちゃになる上に早く冷めてしまう。だからやっぱり一切れ食べるごとにソースを掛けたい。檸檬だって一切れずつ搾りたい。すると衣はサクサクのまま、何口食べても最初の一口のような感動が味わえる。

しかし実際これがいちいち面倒くさい上に行為としてどうもぱっとしない。とんかつの無骨な印象と、衣ごときを気にする繊細さがそぐわない。備え付けのソースに何度も手を伸ばすと、隣の客からも女々しい喰い方をしやがって、と嘲笑されそうだ。怖い。この葛藤を解消する上手い方法はないものか。

今日も大好きなふじもとのロースカツ定食(うまい!)にちまちまソースをかけつつ考えるが、未だ妙案は浮かばない。