観光地化されていないリアルな昭和の風景を体感
もしも「昭和」という元号が変わらず続いていたら、今年はちょうど昭和100年にあたる。昭和を知る世代にとっては、とてもめでたく感慨深い年だ。時代は昭和から平成をまたいで令和へと移り変わり、気がつけば東京の街並みもずいぶんと様子が変化した。
ダントツの高さを誇っていた「東京タワー」は、いつしか周辺の超高層ビルに埋もれ、都内各地の駅前も再開発が続いている。商店街に軒を連ねていた昔ながらの書店や精肉店などの個人商店は姿を消し、今どきの飲食チェーン店やドラッグストアなどの近代的な建物ばかりになった。
時代とともに街並みが変化するのは仕方のないことだが、そういった風景の変貌を目にするたびに、少なからずモヤモヤした感情を抱いてしまう。本心を言えば、ずっとそのままであってほしい。
古い街並みを残そうという価値観は国内でも京都をはじめ、鎌倉や川越など多くの地域に根づいているが、それらはいずれも歴史的建造物が密集する地域ばかりで、昭和時代の庶民的な商店などが並ぶ街並みは、まったくと言っていいほど保存の対象になっていない。だが、そういった庶民の日常生活に密着した街並みにこそ、文化的価値があるのではないだろうか。
このままの状況で行けば、おそらく数十年後には昭和をリアルに体感できるような街並みは跡形もなく消え去っているだろう。そのような風景が完全になくなってしまう前に、少しでも多くの昭和スポットを訪れ、心に深く刻んでおきたい。