Live

東京〈浜町LAB.〉。町の子供たちとの交流も。地域に開くオフィスの先駆け的存在

若手建築家による「町に開き、町を楽しくするオフィス」が話題です。風通しのいい仕事場で、どんなおもしろいことが起こってる?

Photo: Yurika Kono / Text: Masae Wako

「私たちが1階で建築模型を作っている様子を、通学途中に見ていたんでしょうね。ある日近所の小学生が、自分で考えたロゴデザインのプレゼンをしたいって遊びに来てくれたんです」と建築家の大西麻貴が嬉しそうに言う。

大西と百田有希による〈o+h〉が、日本橋浜町の古いテナントビルに越してきたのは2014年。若手建築家による「町に開き、地域を楽しくするオフィス」の、先駆け的存在だ。当時は倉庫用に貸し出されていた「シャッターを開けたらがらんどう」の1階だけを借り、自分たちで改修してオフィスとした。

原点となったのは、東日本大震災後の仮設住宅〈みんなの家〉に関わったこと。半年の間、東北の仮設住宅に住み、町の人と話したりご飯を食べたりしながら設計をした。

その経験から、東京でも町と地続きの1階にオフィスを持ちたいと考えたのだ。2人が選んだ浜町界隈は、江戸時代に日本一の繁華街だった地域。ビル前は隅田川に突き当たる行き止まりの道なので車の往来も少なく、“町の中庭”のようになっている。

「最初のうちは開口部もシャッターだけ。近所の方がお菓子を焼いてきてくださったり、魚屋さんがトラックを横づけして、“こういうので模型を作るんだろ?”と発泡スチロールを置いていってくれたり。閉じたオフィスとは違う関係が、町との間に生まれるんだと驚きました」と百田は振り返る。

ビルの持ち主が浜町の町づくりに取り組むオーナーに替わったのを機に、1棟全体をo+hが改修。1・2階にo+hが入居し、ほかの階はクリエイターたちのシェアオフィスとした。1階はイベントやワークショップ、地域と海外ゲストが出会うオンラインイベントにも使われている。

大西は言う。「浜町には、町ぐるみで子供たちの面倒を見るという昔ながらの下町カルチャーが残っている。私たちも新参者なりにその文化を大切にしたいし、いずれは町づくりにも関わっていけたらと思っています」

東京都〈浜町LAB.〉1階 キッチン、イベントスペース