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爆笑問題・太田光×ナイツ・塙宣之がナビゲートする、東京名所案内。〜後編〜

東京の笑いを牽引する爆笑問題の太田光とナイツの塙宣之が初タッグ。仕事でもプライベートでも思い出深い、彼らにとっての名所の数々をナビゲートしてくれた。アラート寸前(!)、ギリギリエピソードも大公開。前編はこちら
初出:BRUTUS No.919『東京の正解』(2020年7月1日号)

Photo: Norio Kidera / Illustration: Takashi Koshii / Text: Toshifumi Endo

両国国技館

塙宣之

僕は相撲が好きなんで両国国技館にはたまに行きますけど、太田さんはいかがですか?

太田光

俺はあんまり相撲を観ないから、ロケで1回行ったくらい。

ここは相撲のイメージがありますけど、『M-1 グランプリ』の準決勝をやった年があったんです。

太田

ああ、あったね、そういえば。やりにくそうな会場だな(笑)。

そのときに初めて支度部屋に入ったんですけど、トイレも力士用だから便器がでかいんですよ。

太田

えっ、でかいんだ!

特注なんですよ。びっくりしました。あれに座れたのは貴重でした。

太田

お客さん用は普通の便器なんだよね?

そうです。裏のトイレだけがそうなってました。あと〈両国国技館〉の地下に焼き鳥の工場があって、おいしいんですよ。

太田

ほんと?

めちゃめちゃおいしいです。

両国国技館 内部イラスト

中野ブロードウェイ

太田

中野ブロードウェイ〉って、昔はバンドマンが行くようなサイケな店がいっぱいあって、文化人も住んでいたけど、だんだんイメージが変わってきた。

今はオタクの聖地になってますね。腐女子が集まってくるような。

太田

マンガやアニメが好きな人にとってはたまらないんだろうな。俺、マンガは『ドカベン』で止まってるから。

『鬼滅の刃』、面白いですよ。

太田

アニメで3話まで観たけど、ずーっと訓練ばっかりしてんだもの。

強くなるまで待てないんですね。

太田

でもこれ年のせいなのかなと思って。だって『ドカベン』なんて野球を始めるまで相当あるじゃん。

6巻くらいまで柔道やってます(笑)。ところで中野区って芸人がいっぱい住んでいましたけど、あれってたけしさんの影響なんですか?

太田

あれはたけしさんというよりたけし軍団の影響だと思う。松村(邦洋)は水道橋博士に紹介してもらって中野新橋に住むようになったって言ってた。

中野はマンガ家の卵みたいな人が多かったんだよ。当時付き合っていた彼女の友達がマンガ家に憧れてて。『ガロ』やつげ義春が好きで、ボロアパートにわざと住むわけ。劇団員とかもそうだけど。俺、ほんとに中野のボロアパートに住むやつ、大嫌いだった。

うちの兄貴(ピン芸人のはなわ)も僕より一足先に上京したとき、中野のボロアパートに住みましたけどね(笑)。

池袋サンシャインシティ

太田

サンシャイン60〉ができたときのことも覚えてるし、展望台の思い出もある。大学生のときに田中のお袋が亡くなって、友達みんなで葬式の帰りに展望台に行ったりね。

サンシャインといえば長女が3歳の頃、1歳半の妹も一緒に連れて3人でプリキュアショーに行ったんですよ。本番が始まったら1歳半の子が大泣きして僕のマスクまで外しちゃって。それでウンコまで漏らして、こっちは素顔で注目されちゃって大変だった思い出があります。

太田

サンシャインシティは噴水広場で営業とかやってただろ?

よくお笑いライブをやってましたね。でもそこまで偉くないイベンターが仕切ってるイベントだから噴水を止める権利までなくて。

太田

あははははは(笑)。

大事なオチの前に限ってブシューッってなるんですよ。だからみんなハラハラしながら早口で漫才やってました。

神田古書街

太田

神保町は学生の頃、ネットもないから本を探しに毎週日曜日に行ってた。実は古本よりも新刊を探しに〈三省堂書店〉と〈書泉グランデ〉によく行ったな。

新刊を買いに行ってたんですね。

太田

そう。あと当時はビデオもない頃だからチャップリンや黒澤明の名作をなかなか観られなかったのよ。いつも『ぴあ』で探すんだけど、チャップリンの映画とか全然かかんなくて。

ところがベータビデオデッキが出始めの頃、〈三省堂〉の一番上の階に視聴覚室みたいなのができたんだよ。数百円で過去の名作のビデオをヘッドホンで観られるようになった。

めちゃくちゃ面白い話!若い人は絶対わからないですよね、その感覚。

神田 古書街 イラスト

太田

もう一生観られないかもしれないと思ってたから、嬉しくて。

今は観ようと思えばなんでも観られる時代ですもんね。その労力も含めて、いい時代ですね。

太田

だってそれまでは名画座で黒澤がかかると立ち見になってたんだよ。『生きる』はシリアスな話だと思われてるかもしれないけど、超満員で観るとバカウケになるの。ギャグがちりばめられてるから、もうドッカン、ドッカンで。

それは家で1人で観るのとは印象が変わりますね。

浅草演芸ホール

これは普段僕らが出ている劇場です。〈浅草演芸ホール〉は落語中心の寄席で、同じ建物の4階にある〈東洋館〉が漫才や漫談が中心の“いろもの”専門の劇場です。

〈東洋館〉は僕が副会長を務めている漫才協会の定席でもあるんですけど、人気者からテレビに出ていない人まで、いろんなタイプの芸人がいるので気軽に来て楽しめると思います。

太田

漫才協会は塙のおかげで漫才でもなんでもないやつが入ってきたんですよ。にゃんこスター、コウメ太夫とか訳わかんない連中が(笑)。

それ言い訳させてもらいたいんですけど、コント協会っていうのがないんですよ。長く活動できるコント小屋みたいなものがないから、みんなそれで悩んでいて。

太田

そういうことか。

〈東洋館〉はたけしさんが昔エレベーターボーイをやっていたんで(当時は〈フランス座〉)、観光名所としてぜひ来てもらいたいですね。

太田

塙は浅草をどう思ってるの?

正直、仕事をしに行くオフィス街みたいなイメージです(笑)。住んでみようかなって思ったこともあったんですけど、商店街の付き合いが面倒くさそうなのでやめました。
僕らが最初に〈東洋館〉に出たとき、お客さん6人ぐらいしかいなかったんですよ。今は増えましたけど。

太田

それはナイツの力だよね。

ときどき僕、「師匠を若い人たちに紹介して偉い」とか言われるんですけど、紹介しながら「どうしようもねえな」って感覚もあって。訳のわかんない芸人が40過ぎぐらいになると「やっぱり本物の芸人は浅草の舞台にいる」とか言いだすんですけど、全然面白くないんですよ。

太田

うわっはっはっはっ(笑)。

面白かったらテレビが放っておくわけないだろって。そこは間違っちゃいけないなとは思ってます。

太田

ほんとそうだよ。

そういえば何年か前に居酒屋の〈捕鯨船〉で若手同士で飲んでたらたけしさんが来たことがあったんです。帰るときになったらものすごい札束をマスターに渡して「若い芸人が来たらみんなに使ってあげて」って。

しかも、そこにいた若手全員に1万円ずつ配ってくれて。みんなで「ごちそうさまでした!」って挨拶した思い出がありますね。

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太田

たけしさんらしいね。

最後に2人のコンビ名をつけてほしいって言われたんですけど……。

太田

…… 東京アラートで。

たしかに警報が鳴りそうなコンビですけど(笑)。
また機会があったら、よろしくお願いします。

爆笑問題 太田光、ナイツ 塙宣之