選者:大場秀章(東京大学名誉教授)
東京都神代植物公園(調布市)
いつ訪れても楽しんで学べる。
四季折々の花と緑が美しい散策路
学術的研究を目的とした植物園とは異なり、豊かな花と緑を楽しみながら植物の知識が得られるよう造形的な景観に配慮。ツバキ園、ウメ園、ツツジ園など形態別におよそ30ブロックに分かれた園内では、どんな季節に訪れても花を楽しめるように多種多様な植物を展示する。中でも都内最大を誇る274種5,100株のバラ園は圧巻で一番人気。サツキ、ツツジの群生も見事だ。温室には球根ベゴニア室や温帯スイレン室を設け、ここでも1年中開花した花が見られる状態を維持している。
東京大学大学院理学系研究科附属植物園(文京区)
植物学史上で数々の発見を生む舞台となった、
日本最古の歴史ある植物園
約320年前に徳川幕府が作った小石川御薬園を前身とし、小石川植物園の名で親しまれる日本最古の植物園。長い歴史を物語る建造物や日本庭園のほか、江戸時代から栽培されてきたサネブトナツメやサンシュユの老木といった薬用植物など由緒ある植物も多く保存されている。日本の植物学史上に残るイチョウの精子発見の場となったのもこの園。歴史的、学術的に重要な場であるとともに、住宅街の真ん中で生きた化石と呼ばれるメタセコイア林などの深い森を散策できるのも魅力だ。
環境省 国民公園 新宿御苑(新宿区)
さまざまな形式の庭園を同居させた、
数少ない風景式庭園の名作
数々の巨樹の向こうに高層ビルを望む新宿御苑。65種1,300本ものサクラが、1か月以上にわたり楽しめる都会の名所としてもあまりにも有名だ。そもそもは皇室の庭園として1964年に誕生。30mを超えるユリノキが目印のイギリス風景式庭園、バラ花壇とプラタナスが並ぶフランス式整形庭園、季節ごとに違った顔を見せる回遊式日本庭園などを巧みに組み合わせた、風景式庭園の名作ともされている。