Visit

東京/神津島。都心から45分、星々が見えすぎる島へ

世界基準の星空保護区に認定されたダークスカイ・アイランド神津島。現代の天上にもこんなに多くの星々が輝いていることを知る旅は、モノの見方を大きく変える。

photo: Koh Akazawa / text: Masae Wako

海も登山も温泉も。
2日でみっちり回れる小さなパラダイス。

「時間よ止まれって歌があるでしょ。あの感じ。星の数がすごすぎて、世界を止めたくなるんだよ」

昼間出会った漁港のお父さんの言葉を思い返す夜8時。都心から南へ180km離れた神津島を訪れたのは、その星空を見るためだ。他島からの光害がなく、夜空の暗さを保つために街灯はすべて下向きというこの島は、国際認定制度によって日本で2番目の星空保護区に認められたダークスカイ・アイランド。

小型飛行機
19人乗り小型飛行機で神津島空港着。

月明かりのない晴れた夜、海沿いの展望台でレンタカーを降りたとたん、星が見えすぎてクラクラする。すごい、という声が上ずって、で、なんだかわからないけど涙がこぼれそう。嘘みたいだけれどプレアデス星団も天の川も肉眼で見えるのだ。

都心では見えていなかったたくさんの輝きが、確かに存在していることをこの目で知る。世界の見え方が変わるかも。

神津島〈ありま展望台〉
海岸や遊歩道など随所に星空スポットがあるが、前浜海岸を一望する〈ありま展望台〉で仰ぐ星空は別格。17世紀に島で暮らしたキリシタン・おたあジュリアを偲ぶ白亜の巨大十字架も。駐車場あり。住所:東京都神津島村鴎穴 | 地図

朝9時半には島に着く。
星降る夜まで時間は十分。

伊豆七島を造るために神々が集ったという伝説も残る神津島は、1周約22km、面積20km2弱の小さなパラダイス。東京・調布飛行場からわずか45分という気軽さも魅力だが、なにしろ空から見下ろした景色にいきなり心が跳ね上がる。

アルプスのような稜線と白い山肌。これが島のシンボル、天上山。ターコイズブルーの海で獲れるのは、神の島の赤い宝石・金目鯛だ。熟練の漁師が一本釣りする高級魚が、刺し身に煮付けに干物にと一年中味わえる。

小さな島の西側に民宿や飲食店が集中しているから、ここを拠点にすればどこへでも行ける。メインイベントは初日の夜の星空観賞。前後の昼の予定は当日の気分で決めるくらいがちょうどいい。天上山トレッキングもよし、岩場の遊歩道の飛び込み台からエメラルドブルーの入り江へダイブするもよし。

宙にふわりと身を任せる数秒間。世界のどこにも属さない瞬間の、なんて気持ちいいことか。展望露天風呂に浸かって藍色の沖を眺めれば、葛飾北斎の浮世絵さながらの大波が、ザザザザッパーン!と躍りくねっている。

夕日が沈み、島が漆黒の闇に包まれてからは、まさに時間も世界も止まったよう。民宿に戻り布団にくるまって目をつぶると、満天の星がこぼれ落ちてくる。明日も絶景に出会えるだろうけれど、この星空の記憶を上書きしたくないとも思う。上書きするのなら、8月のペルセウス座流星群を観にまた訪れたい。

SPOT DATA

MODEL PLAN

1日目

09:30 神津島空港着。レンタカーを借りる。

10:00 多幸湾展望台で天上山と漁港の絶景を眺める。

12:00 〈Cafe & Diner ‘AILANA〉でハンバーガー。

13:00 神津島港の漁協で金目鯛の入荷を見学後、海岸沿いをドライブ。ぶっとおし岩、トロッコ線路跡、うずまき岩など絶景の目白押し!

14:30 〈赤崎遊歩道〉飛び込み台から入り江にダイブ。

15:30 〈神津島温泉保養センター〉で露天風呂に浸る。

16:30 夕景の前浜海岸を散策する。

18:00 民宿〈吉栄丸〉にチェックイン。早めの夕食。

19:30 〈ありま展望台〉で満天の星を仰ぐ。余裕があれば〈三浦湾展望台〉や〈よたね広場〉も。

2日目

07:00 早朝の海岸を散策。朝食後チェックアウト。

08:00 天上山トレッキング。スーパーで“地のり”入りの醤油おにぎりを買い、黒島登山口から登山。

13:00 下山後、島の開祖を祀る〈物忌奈命神社〉参拝。

14:00 〈ヒューガブルワリー〉で赤イカ塩辛のバゲットを味わい、神津島空港へ。

神津馬 地図

神津島へは東京・調布飛行場から1日3往復する小型飛行機で片道約45分。

東京・竹芝桟橋からの高速ジェット船(片道約3時間45分)や大型夜行客船(片道約12時間)もある。島内ではレンタカーでの移動が便利。