店内を見渡せば、視界に入るのは主に〈エルエルビーン〉に〈エディー・バウアー〉、〈シエラデザインズ〉や〈コロンビア〉といった誰もが知るアウトドアメーカーのアーカイブウェアたち。アメリカらしい良い意味でイナタいチェックシャツに、マウンテンパーカやダウンベスト、トラウザーなど、全国で馴染みのあるこれらのヴィンテージウェアも、ここ〈TOD〉ではどこか違って見える。
これらのアイテムは古着店だと、びっしり詰め込まれているラックに掛かっているイメージだが、ここでは一品一品が丁寧に吊されているからだろうか。〈ロッキーマウンテン フェザーベッド〉や〈ビッグヤンク〉の新作や別注品も、それらと分け隔ても遜色もなく置かれているのも一つの要因なのかもしれない。
「トラディショナル・アウトドア・デザインズ」の頭文字が店名由来のこの店は、2022年末に誕生したばかり。オーナーの佐々木雄介さんは文化服装学院卒。パタンナーを目指し、卒業課題ではダウンベストを作り、就職活動でそれを携えて面接を回ったらしい。
根っからのアウトドアウェア好きが高じて、〈サーティーファイブサマーズ〉に10年在籍し、様々な部署でトラディショナルアウトドアウェアの世界に没頭。遂には自分の店を構えた(現在は古巣のブランドの現行品をセレクトし取り扱う)。
「前職を2020年前に退職し、ウェブ販売とイベントをメインにアウトドアファッションを提案するところからスタートしたんですが、やはり人と直接関われる場所を持ちたくて。実店舗を持ったことで顧客と関われる機会が増え、最近は趣味のカメラを生かしスナップ写真を撮ってSNSにアップする活動を始めています」
佐々木さんはカメラの三脚を背中に収納できるフォトグラファージャケットや、仕留めた獲物を入れるゲームポケットの付いたハンティングジャケットなど、合理性から生まれたアイテムに特に目がないのだが、この店が面白いのはそれらの伝統的なアウトドア服を多数揃えているところだけにあらず。なんとスタイリングにまでトラッドを取り入れていて、ヘビーデューティとアイビーを合わせた“ヘビアイ”的な着こなしも現代で再現していたりするのだ。
しかもしかもアイテム、スタイリングのトラディショナルだけではまだ足らず。佐々木さんは伝統を重んじ、アウトドアスポーツ店の聖地であった神田エリアに絞って空き物件を探したというから脱帽である。
古き良きアウトドアファッションを爪の先まで体現し、セレクトやコーディネート、場所選びまで時代を超越しているこの徹底ぶりがすごい。
SELLING POINTS
● 古着、新品を問わず伝統的なアウトドアウェアが揃う。
● 稀少なレディースサイズも積極的にバイイング。
● アウトドアに所縁の深い地でかつての空気感も味わえる。