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約30年を共にした編集者が語る、五味太郎の魅力。初のフォトエッセイ『6Bの鉛筆で書く』が刊行

『きんぎょが にげた』『たべたの だあれ』など400冊近い著書を発表してきた、絵本作家・五味太郎。初のフォトエッセイ『6Bの鉛筆で書く』出版にあたり、本作を編集し、五味と30年以上を共にしてきた編集者・若月眞知子さんに話を聞いた。

text: Yoko Hasada

画家・五味太郎の目が捉える、日常の喜びと違和感。

「五味さんと初めてご一緒したのが『らくがき絵本』。普通の絵本とは違い、絵を描いたり、言葉を足したりして作る書き込み式の絵本です。五味さんならではのウィットとユーモアで、それまでにない画期的な絵本ができました。半年かけて制作したこの絵本は大ブレイクし、17の言語に翻訳。世代や国境を超え、30年以上支持されてきました」

後に、若月さんは五味さんの絵本を54冊出版。彼の作品が老若男女に愛される理由とは。

「五味さんは物事の本質を見極める能力がずば抜けて高い人。童話『はだかの王様』に出てくるような明快な指摘に、子供も大人も心をつかまれるのだと思います。また、社会への違和感も表現できる人。『じょうぶな頭〜』は90年代初頭、髪の毛の色やスカートの長さを制限し、校則で縛る学校が出始めたときに、五味さんなりの言葉で疑問を呈した本です」

絵本作家としてだけでなく、その言葉の才能にも魅せられてきたと若月さんは話す。

「路傍の石文学賞を受賞した『ときどきの少年』など、文壇でもその才能が評価されている方。17文字で表現する俳句は、五味さんの得意分野ですね。ぎりぎりまできりつめた言葉で、情景を詠んでいくのは、明快であろうとする五味さんの真骨頂だと思います。小説家とは違った、画家の目で描かれる言葉の世界には、独特な魅力がありますね」