Listen

Listen

聴く

シンガーソングライター・田島貴男が語るジャズ。はみ出し者が広げてきた革新性に惹かれて

今、ミュージシャンが一番夢中な音楽、それはジャズかもしれない。ロック、ヒップホップ、R&B……音楽家は、その魅力をどう捉えているのだろうか。シンガーソングライター・田島貴男におすすめの3枚とともに大いに語ってもらった。

photo: Wakana Baba / text: Shunsuke Kamigaito

連載一覧へ

はみ出し者が広げてきた革新性に惹かれて

僕が高校生の頃は、どんな街にもジャズ喫茶があったんです。そして、そこには音楽を教えてくれる謎のおじさんがたくさんいた。ご当地のマイルスみたいな人たちですね(笑)。彼らが集まってバンドを組んでいるところに、僕もたまにギターで参加したりしていて。

当時の僕はジャズの知識なんてほとんどなかったけど、オリジナル・ラブの初期の曲にII-Vの進行やテンションコードが入ったりしてるのは完全にその影響なんです。40代後半になってからジャズギターを習い始めたことで、ようやくその和音やリズムの仕組みをきちんと曲に落とし込めるようになりました。

今に始まったことではないですが、ジャズ界のはみ出し者みたいな人がソウルやヒップホップと結びついて革新的な音楽を作り出しているシーンは面白いですよね。彼らを見ているとまだ自分にも挑戦できる余地があるはずだという気持ちになって、いつも刺激をもらっています。

シンガーソングライター・田島貴男

田島貴男が選ぶ、おすすめの3枚

Q1:オールタイムベストは?

『Live!』Jim Hall

ジム・ホールが1975年にトロントで行った公演のライブ盤。楽器というのは不思議なことに、壊れる前が一番いい音を出したりするんです。ここで弾いているES−175も年季が入っていて、たぶんこれを最後に使ってないんじゃないかな。その音色が素晴らしくて、僕もジャズギターを習いたいと思いました。

Q2:昨年一番聴いたのは?

『'Criss Cross' Live Charlie Wrights』Chris Dave Trio

ロバート・グラスパーやディアンジェロとの共演で知られる名ドラマー、クリス・デイヴ。彼のライブがすごくて、特にこれはベースがファンキーな演奏を続ける中、サックスとドラムが全く違う展開を始める信じられない映像です。最近の演奏ではないですが、僕は今でも事あるごとに見返しています。

Q3:これからジャズを聴く人へのおすすめは?

『Kind of Blue』Miles Davis

言わずと知れたマイルスの代表作です。ジャズの良さなんていきなりわかるものではありませんよね。ただ、ジャズプレーヤーたちが命を削って生み出した音色の美しさだけは直感的に理解できる部分があると考えていて。このアルバムの最高峰のトランペットの録音を聴けば誰もが心地よい気分に浸れるはず。

連載一覧へ