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進化する台湾ワインの今を訪ねる〜注ぎ手編〜

これまでワインのイメージがなかった台湾に、近年、大きな変化が起き始めている。国内で高品質なワインが造られるようになり、都市部では、今世界で注目を集めているナチュラルワインのバーが夜ごと賑わいを見せている。最新のワイン事情を探りに、台中、台北で造り手と注ぎ手を訪ねた。造り手編はこちら

photo: Keiko Nakajima / text: Kei Sasaki / coordination: Machiko Suzuki

台湾のナチュラルワインシーンを牽引するバーへ

WeightstoneとErhlin Vineyardのワインを飲むなら……

台湾産ワインの品質向上と足並みを揃えるように、ワインを楽しむ場もまた、進化を遂げている。かつては一部の高級レストランでしか提供されていなかったワインが、ここ数年で人々の日常に浸透しつつあるのだ。その流れを牽引しているのが、今、世界で注目を集めているナチュラルワインを扱うワインバーだ。

台湾×世界のナチュールでアジアのワイン拠点に

ボトルに白いマーカーで価格が書かれたワインがずらりと並ぶ。数年前には考えられなかった、世界のナチュラルワインバーではお馴染みの光景を、台湾で見かけることになるとは!台北に2019年に開業した〈CAN NATURE〉は、台湾ナチュラルワインシーンの核となる店。オーナーソムリエは、ケニーさんこと李庭瑋さんだ。

ケニーさんがワインバーを開こうと思ったのは15年前。26歳でフランスに渡ったときだ。「欧州各国では、ワインは文字通り水代わり。価格も水と変わらず、食事のときは必ず、昼からでもワインを飲む。そのことに感銘を受けました。ナチュラルワインに出会ったのも、その頃です」

帰国後、台北の高級フレンチや〈マンダリン オリエンタルホテル台北〉などでソムリエを歴任し、独立。普段着でふらりと寄れて、昼から飲めるカジュアルな店で、ワインの魅力を伝えている。ケニーさんは〈ウェイトストーン〉のワインも紹介している。

「店で扱うナチュラルワインと同じ感覚で飲める。年々、おいしくなっていると感じます」

〈肯自然 Can Nature〉
世界の飲み手、造り手が集う台湾を代表するワインバー

時を同じくして、台中にもナチュラルワインのバー〈WINE NOT〉が誕生している。オーナーはケニーさんがホテル勤務時代に共に働いたマックスさんこと林哲緯さんだ。

グラフィカルなウォールアートが印象的な店内は、モダンなギャラリーさながら。愛用の自転車もディスプレイされている。マックスさんは、サイクリストとして欧州を旅するうちに、ワイナリーの景色の美しさに惹かれ、ワインの道へ進んだ人なのだ。

台中に開いた店には、世界各国からゲストが集まる。「台湾産のワインはないの?」と、たびたび尋ねられることから、〈アーリン ヴィンヤード エステート〉のワインを扱うことに決めた。理由は、「台湾のフルーツに通じるアロマがあると感じるから」だと話す。

ケニーさんもマックスさんも、トップレストランでの経験も豊かなソムリエだ。そんな2人がスーツを脱いで自らの店のカウンターに立ち、フランスやイタリアのナチュラルワインと台湾ワインを並べて紹介している。

世界を食べ歩くフーディも若いアーティストも一緒にグラスを傾け、時に海外から来台する生産者を囲んでワインを楽しむ様子は、少し前の台湾では想像できなかった未来だ。造り手も飲み手も巻き込んで、さらに大きなうねりを作るに違いない。

〈WINE NOT〉
台中から、台湾全土へ。ナチュラルワインの最前線