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根本宗子のあまい東京記:執筆を後押しする、神保町と甘い最中

根本宗子が思い出のスイーツを綴る連載。前回の「昔も今も丸の内で出会える、幸せの味」を読む。

illustration: Michiko Furutani / edit: Emi Fukushima

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〈御菓子処さゝま〉の「松葉最中」

御菓子処さゝまの 「松葉最中」_イラスト

1931年創業の老舗和菓子店の名物。薄めの皮と滑らかなこしあんが特徴。表面には美しい松葉菱の紋が刻まれており、その上品な見た目は、手みやげにもピッタリ。1個150円(TEL:03-3294-0978)

執筆を後押しする、神保町と甘い最中

本の街、神保町。高校時代は古本屋巡りに訪れ、作家という職業についてからも出版社での打ち合わせで頻繁に出向く街となった。作家になってから一番の驚きというか、「ありがとうございます」と思っていることは、どんな担当編集者の方も会うたび「原稿待ってます!」と言っておいしいお菓子をくださること。

「原稿書けよ?」というプレッシャーとしても受け取りつつも、自宅での作業が多い時期の差し入れは大変にありがたい。中でも神保町にある某出版社の私の担当編集の方は、神保町にある老舗和菓子店のお菓子をよくくださる。

いただいた中でも最も私が気に入っているのがこの松葉最中。幼少期、異常な最中ブームが自分の中で到来したことがあったのだが、それ以降はあまり注目してこなかったので最中に感動したのはとっても久々だった。

最中の主役であるあんこのキメの細かさ、上品さ、風味、すべてが完璧な最中なんです。こんなに滑らかな舌触りのあんこを私は最中で初めて食べました。あんこってそもそもおいしいけど、だからこそ上質なもののずば抜け方がすごいですよね。松葉最中が締め切り前の私を支えてます。お年賀にもぜひ。

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