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根本宗子のあまい東京記:学校帰りの有楽町で、ゴマを口いっぱいに

根本宗子が思い出のスイーツを綴る連載。前回の「演劇への情熱を支える、ぎっしりフルーツと神田の町」を読む。

illustration: Michiko Furutani / edit: Emi Fukushima

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〈甘味おかめ〉の「おはぎ 胡麻」

甘味おかめのおはぎ胡麻

注文を受けてから一つ一つ手作りする、大きくて軟らかいおはぎ。小豆と砂糖だけで作る甘さ控えめの餡と、すり黒ゴマの香ばしい風味が持ち味。(交通会館店TEL:03-3216-6008)

幸せを口に入れたような味と食感

高校時代、帝国劇場で大好きな演目が上演されるたび学校帰りに有楽町へ通っていた。今は多分もうないのだが、当時演目によっては学割対象の座席があり、お小遣いを握り締め当日券に並んでいた。

もちろん何度も観劇するような財力は当時の高校生の私にはなかったので、「あの演目がやっている空気だけでも吸いたい!」とチケットもないのに有楽町へ行くこともしばしばあった。そんな時に必ず一人で入っていたのが〈甘味おかめ〉だった。

今は有楽町イトシアにも店舗がある人気店だが、当時は交通会館の中だけにひっそりあり、制服姿でぽつんと一人赤飯や、蔵王あんみつを食べて舞台に思いを馳せていた。

中でも大好きだったのが〈おかめ〉の胡麻おはぎ。私は幼少期からとにかくおはぎが大好きなのだが、〈おかめ〉よりもおいしくて満足感のあるおはぎに出会ったことがない。

とにかく高校生のお小遣いで買うにはすごく嬉しいボリューム感だったし、ゴマ好きの私にはたまらないほど大量にゴマを使ってくれている。6時間目の授業が終わり、有楽町へ行き、〈おかめ〉でお腹を満たし、帝劇から出てくる観劇終わりのお客さんを眺めるのが高校時代の日課だった。

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