忌野清志郎&仲井戸麗市、伝説の往復書簡が30年の時を経て書籍化

音楽誌『ロッキング・オン・ジャパン』で1994年より約2年にわたり連載された、「忌野君と仲井戸君」が、30年の時を経て書籍となった。RC現役時代を追えなかった積年の思いを背負い夢中で連載を読み漁(あさ)ったライターの鈴木淳史が、かつての雑誌の読者投稿を思わせる書評を綴る。

text: Atsushi Suzuki

ふたりの文通を盗み読みしている感覚だった

1991年1月。僕が中学校1年の時、RCサクセションは無期限活動休止に入った。94年秋、「忌野君と仲井戸君」連載開始。無期限活動休止=仲が悪く絶縁と思い込んでいた関西の高校生の常識は覆された。

同年8月日比谷野外音楽堂での清志郎と仲井戸によるライブ『GLAD ALL OVER』が開催される。東京出身のガールフレンドから予備校を休んで観に行ったと耳にたこが出来るほど聞かされた95年。だからこそ、往復書簡連載は唯一誇れるリアルタイムの出来事だった。

特に清志郎の長男が交通事故にあった時の生々しいやり取りは、読む事を躊躇(ちゅうちょ)したし、バンドを超えた家族の様な深い関係に胸を打たれたのを覚えている。

下の下の後追いファンだった少年も、今はそれなりのおっさんコアファン。未だに眠れない時は90年代の『ロッキン』を引っ張り出し、「忌野君と仲井戸君」のページを読む。ネットもSNSも無かった時代。

『ロッキング・オン・ジャパン』インタビュアーは渋谷陽一
当時の『ロッキング・オン・ジャパン』インタビュアーは渋谷陽一。(著者私物)

ロックンローラーが考えている事を文章で知れる雑誌は貴重だった。彼らはコンプライアンスやハラスメントに怯える事もなく、ただただドカドカうるさいロックンロールバンドを鳴らしていたわけで。10代の僕も明るい未来を信じきっていた。

でも今現在は世知辛いから眠れない。そんな時、ページを開くとあるのはいつだって迷いも恐れも無い世界。これからはページを勘で開かなくても、書籍を開けばよい。新たな頼もしい相棒と一緒に、眠れない夜を越えて、明日なき世界をもう少し生きてみよう。

『忌野くんと仲井戸くん』
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