夏こそ読書にうってつけの季節?
毎年、6月頃になると英米の雑誌は一斉に「サマー・リーディング」の特集を組む。夏に読むべき本のブックガイドである。「ビーチ・リーディング」という言葉もある。バカンス先で砂浜やプールサイドに横たわって読むのにぴったりな本を指すのに使われる言葉だが、軽やかに楽しめるタイプの本が選ばれることが多い。
よくビーチ・リーディングのリストに挙がる作家といえばテイラー・ジェンキンス・リードとエミリー・ヘンリーだ。前者は華やかな業界を舞台にしたエンタメ小説の作者。後者はユーモラスなロマンス小説で有名で、どちらも現代的なフェミニズムの視点が入っているところがポイントである。
でもいつから、夏は読書に最適のシーズンだと謳われるようになったのだろう?19世紀の雑誌文化の研究者ドナ・ハリントン・リューカーによると、都市化と工業化が進んだこの時代に、人々は夏に休暇を取って町を離れるようになった。それまで上流階級のものでしかなかったバカンスが中産階級の間でも流行し始めて、雑誌が夏の余暇特集を組むようになったという。
そこでよく使われたのが、ハンモックなどでくつろいで読書する若い女性たちのイラストだった。そのイメージによって読書は水泳や観光と同じく、休暇を象徴する行為となっていったのである。
さらにバカンス的なフレーズであるビーチ・リーディングの方は1990年代から使われだしたようだが、起源はわかっていない。『ブリジット・ジョーンズの日記』などの当時のチック・リット(女子小説)ブームと関係しているような気もする。
