「役名は“杉咲花”ですが、本人役という意識は持たないようにしていました。自分に置き換えてしまうと、なりたい自分像に引っ張られてしまう気がしましたし、作品ごとに違う輝きを放つそれぞれの人物を、脚本を読んだイメージや現場での空気感に従って演じたいなという気持ちでした」
気鋭の3人の監督と演技派俳優が創作する「日常」
WOWOW『撮休』シリーズは、話題の映画監督が撮ることでも注目されており、『杉咲花の撮休』は松居大悟、今泉力哉、三宅唱が名を連ねた。杉咲さんにとって全員初タッグ。
「ご一緒したかった監督方でしたので、本当に嬉しかったです」
コインランドリーや定食屋に行ったり、友達と笑い転げたり、部屋を掃除したり。ドラマの中の杉咲さんは、20代のごく普通の女の子と変わらない暮らしをしている。それが自然に見えるのは、杉咲さんが日常を大切にしているせいだろうか。
「そう思っていただけるのはとても嬉しいです。家が好きなので、掃除や料理など、家事をする時間も好きで。演じることは、生活の地続きにあるものだと思っています」
お芝居には、楽しさと同時に難しさも感じている。
「お芝居をしながら、自分のことを俯瞰して見てしまうもう一人の自分がいるような感覚になることが多く、無我夢中でのめり込めるような瞬間ってほとんどないんです。もっと感情に逆らえなくなるような瞬間を迎えられるようになりたいです」
それが最近、突破口を少しだけ掴めたように感じると語る。きっかけは、欲を持たないようにしたこと。
「台本を読んでいると、どうしてもいいシーンにしたいと思ってしまうのですが、カメラの前に立ったら、そういった欲を手放してみる。ただ、そこにいるということを心がけていたら、本番の時間を思い出せないくらい、目の前の出来事に純粋に向き合えた瞬間がありました」
現場で何が起きようと、素直にそれを受け止める。そんな姿勢が相手役の演技をも生き生きと引き出すのだろう。取材中もこちらの目を真っすぐに見て、誠実さの塊のような受け答えをしてくれた。ちなみに、現実の撮休の過ごし方はこんなふう。
「最近、ハンモックを買ったので、ハンモックに揺られながらお昼寝をしたり映画を観たり、本を読んだりしています」