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トーストの組み合わせの妙にエキスパートが挑む!10の味を食べ比べ

軽く焼き目をつけた食パンに、バターとコンフィチュールをひと塗り。朝の定番メニュー、トーストはそのシンプルさゆえ、逆に奥深い。食パン専門店が人気を博し、トーストが注目を集める今、全国から30品の取り寄せ、エキスパートに実食してもらった。前編「最強のトーストを探せ!エキスパートが考える最強のトーストとは」を読む。

photo: Kenya Abe / text: Ai Sakamoto / styling: Kinuko Minai / cooperation: BALMUDA Inc.

日本のやさしい甘さをテーマにセレクト。一体感が秀逸です

テーマは〝日本のやさしい甘さ〟。すべて日本製で統一しました。パンの香りがピュアでしょ。甘くてとろっとした味わいと濃度がパンにあるから、バターやコンフィチュールをのせても、いいハーモニーを奏でるんです。(池田)

(左から)〈シマイ〉のブラン(オンラインショップ取扱なし)/姉妹で営む人気店。姉は天然酵母、妹はイーストでパンを作る。ブランは後者。「シンプルなトーストが好きで、耳がパリッと中がもっちりするよう仕上げた」という。国産小麦使用。1/2本200円。公式サイト:http://www.cimai.info
〈横市フロマージュ舎〉の横市バター/北海道芦別産の牛乳と天然塩で作る。180g作るのに約5Lの生乳を使用。純度が高く、牛乳本来の風味が豊か。180g木箱入り1,620円。公式サイト:http://yokoichicheese.com
〈ロミ・ユニコンフィチュール〉のジルベルト(オンラインショップ取扱なし)/菓子研究家いがらしろみが手がけるジャム専門店。さっぱりとしたリンゴにアールグレイの風味を加えている。80g700円。公式サイト:http://www.romi-unie.jp

喫茶店天国・名古屋で愛されるトーストを再現しました

愛知の喫茶店で、よくモーニングサービス用のトーストに使われているパンなんです。ただ喫茶店ではマーガリンを合わせるのが一般的。これは私にとってのバタートーストの定番ですね。(梶田)

(左から)〈本間製パン〉のイギリス食パン/愛知の多くの喫茶店で、モーニングサービス用に使われている業務用食パン。職人が7種類の小麦粉をブレンドして焼き上げたパンは、弾力と口溶けの良さが身上だ。山3斤1本820円。公式サイト:http://www.honma-bread.com
〈小岩井乳業〉の小岩井 純良バター/1902年から販売されている看板商品の発酵バター。生クリームに乳酸菌を加えて発酵させるので、少し酸味のある香りが特徴だ。160g705円(税抜)。
〈かこ 花車本店〉のいちごとバナナのコンフィチュール(オンラインショップでの取扱なし)/1972年創業のコーヒーショップの店主が手作りする。1日以上寝かせた砂糖漬けの果実を銅鍋で炊き上げる。250g1,200円。TEL:052-586-0239

食べ飽きない懐かしい味の重奏。決め手は柑橘の苦味

苦味が好きなんですよね。甘すぎず、しつこすぎずで食べ飽きない。この組み合わせが子供の頃から好きかも。(桑原)

(左から)〈ツオップ〉の日本の小麦食パン/パン好きの聖地と呼ばれる有名店。北海道産ゆめちからをベースに、きたほなみ、ホクシンなどを配合。しっかりこね、十分発酵させることで国産小麦特有のモチ感とすっきりした甘味を引き出す。1斤356円。公式サイト:http://zopf.jp
〈サツラク農協〉のサツラク北海道手造りバター〈発酵〉/昔ながらの製法で丁寧に練り上げた、まろやかな風味が魅力。一般の有塩タイプに比べて塩分を45%カットしている。130g988円。公式サイト:http://www.satsuraku.com
〈ウェンディさんの手作りジャム〉のオレンジマーマレード/英国のVIP御用達。通常の2〜3倍の果実にサトウキビ糖を加えて作る。添加物不使用。340g2,052円。公式サイト:http://www.hi-ginza.com

もちろん素材も厳選。一度は食べてみたいハイプライスセット

高級食パンと聞いて少し腰が引けていましたが、思ったほどリッチすぎず食べやすい。(桑原)
ブリオッシュっぽいけど、独特の食感がある。パフパフ感?真珠粉が入っているせいかな。(池田)

(左から)〈レトワブール〉のXO食パン/仏産の小麦や塩、北海道産生クリーム、奥丹波の地養卵など厳選した高級食材を使用。中には、美容効果のある食用の真珠粉も。特殊製法で生地を仕込み、約55時間かけて作る。2斤6,500円。公式サイト:http://www.les3boules.jp
〈オーダーチーズ〉のバター・ドゥ・ロドルフ・ムニエ(有塩)/仏最優秀職人の称号を持つチーズ熟成士、ロドルフ・ムニエがプロデュース。48時間の長時間発酵による深いコクと風味。250g3,456円。公式サイト:http://www.order-cheese.com
〈花のようなケーキ〉の静岡産マスクメロンのジャム/静岡県産の最高級マスクメロンを1玉使用。開発に6年を要した一品。ヨーグルトにかけて食べるのがオススメ。300g10,800円。公式サイト:http://www.hanacake.com

豊かな自然が育んだ大地の味。阿蘇からの贈り物

みんな阿蘇で育ったり、作られたものだから、なんとなく全体的にテロワールを感じます。(桑原)
このミルキーなパンには、ほかのバターも合う気がする。なんだろう……。探さなきゃ!(梶田)

(左から)〈そらいろのたね〉のジャージーミルク食パン/〈高村武志牧場〉の山吹色のジャージー牛乳と〈相良ポートリー〉のきらめき卵を使用。水を使わずこね上げている。甘さほんのり。1本500円。公式サイト:http://soraironotane.jp
〈JA阿蘇〉の阿蘇小国ジャージーバター(有塩)/日本有数のジャージー牛の飼育地・小国。濃厚な味わいと色味からゴールデンミルクと呼ばれるジャージー牛乳を100%使用し、伝統的な製法で仕上げている。雑味の少ない自然な甘味や豊かな香りが特徴。150g864円。TEL:0967-46-4121
〈料理研究舎リンネ〉のコンフィチュール ふじみのり(オンラインショップ取扱なし)/菜食ご飯とスイーツを供する食堂の自家製。南阿蘇の農園で収穫したブドウを使用。柑橘果汁であっさり仕上げる。110g箱入り850円。公式サイト:https://www.linnelab.com/

これぞ定番!?安定感たっぷりの3品をセレクト

いよいよ折り返し地点。ザ・定番セットの登場ですね。ここまで食べて、バターだけでもまったく個性が違うのがすごい。(池田)
最初は、イチゴの甘さを素直に出したジャムがするっと前に出るんだけど、その奥にしっかりパンとバターの存在感がある。(梶田)

(左から)〈ペリカン〉の角食/1942年創業の老舗。“ご飯のように毎日食べられるパン”がモットー。目の詰まった、少し小ぶりの食パンは歯切れよくモチモチとした食感。ふわっと香る小麦の香りもよし。2斤960円。公式サイト:http://www.bakerpelican.com/
〈よつ葉乳業〉のよつ葉バター 加塩/1969年から販売している定番商品。十勝産の生乳を100%使用。やさしい風味がどんな食材や料理にも合う。150g345円。公式サイト:http://www.yotsuba.co.jp
〈沢屋〉のストロベリージャム/1952年創業の老舗で、一番人気を誇る。イチゴの形を残すプレザーブスタイル。やさしい甘さ。レギュラーサイズ260g1,620円。公式サイト:http://www.sawaya-jam.com

素材の力にあふれた、生産者の顔が見える組み合わせ

生産者ならではの素材への信頼感や自信を感じさせますよね。うっ、マンゴー♪(池田)
この組み合わせ、すごい。ここまでで一番好きかも!(梶田)

(左から)〈空と麦と〉の山形食パン/八ヶ岳の自家農園で自然栽培した小麦に国産小麦をブレンド。食パンは国産小麦と天然酵母、無塩バターで焼き上げている。1斤390円。公式サイト:http://www.soratomugito.com
〈ミルク工房そら〉のミルクバター/ジャージー牛30頭の小さな牧場に併設。搾りたての生乳から手作業でバターを作る。丹後の天然塩を使用。瓶入り150g2,310円。公式サイト:http://www.tango-jersey.co.jp
〈アグリストリームきむら農園〉のマンゴーコンフィチュール/自社農園のブランドマンゴー「時の雫」を使用。果実を丸ごと食べているような芳醇な味。国際審査会で高評価。4種類のコンフィチュールセット(各110g)3,996円。TEL:090-8943-6804

キーワードは海藻。塩の香りをまとった海のトーストをどうぞ

それぞれが個性豊かだから、単体で味わうか、別な組み合わせにした方がいい。パンは塩気のある具材を挟んでサンドイッチに、バターは魚介のスープに合わせて。ミルクジャムは、味のベクトルが似たものと組み合わせるといい気がしますね。(池田)

名古屋人としては、この組み合わせに粒餡を合わせて、甘じょっぱい系にしてみたい(笑)。(梶田)

(左から)〈海藻専門店たまも〉の天然酵母あらめ食パン/海藻加工卸業者のコンセプトショップ。三重県伊勢志摩産の海藻、アラメを生地に入れて焼き上げている。北海道産の小麦粉オホーツクや奥能登海水塩などほかの素材も厳選。1斤702円。TEL:047-448-8331 
〈レストラン・イオマンテ〉のくしろ海藻バター/釧路のフレンチシェフが手がけた一品。同地方の生乳で作ったバターに、ナガコンブやギンナンソウなどの海藻を練り込む。100g922円。公式サイト:http://www.i-omante.com
〈空口ママのみるく工房〉のソルティーミルクジャム/広島県湯来町の牛乳を煮詰めたジャム。《海人の藻塩》が甘味を引き立てる。ザ・広島ブランドに認定。140g880円。公式サイト:http://soraguchimama.jp/

心と体にやさしい、シンプルな味わいの3品をセットに

(9)のバターはすごく色白で香りも独特。いわゆるバターの風味ではないような。(桑原)
コンフィチュールは酸味がすごくいいですね。日本のものにはない複雑な風味がする。(池田)

(左から)〈キッチンストーブ〉のソフト食パン/治部坂高原で自家製天然酵母を使ったパン作りを行う。国産小麦粉とバター、ほしの天然酵母で焼いたシンプル&食べ飽きない食パン。1斤340円。公式サイト:http://k-stove.com
〈大内山酪農〉の大内山手造りバター/大内山酪農の酪農家が搾った生乳を使用。伝統製法で作った一品は豊潤でいて、食べ飽きない。300g2個入り3,434円(送料込み)。公式サイト:http://www.ouchiyamarakunou.com/
〈ミオジャム〉のジャムの王様/ジャム作りの王様と呼ばれるブランド。桃、アンズ、ラズベリーのミックスジャムは酸味と甘味のバランスが絶妙。砂糖不使用。200g1,615円。公式サイト:http://www.francoisejapan.com/

個性豊かな3つのアイテムが複雑な味の層を構成

個性の強いパンとバターに対して、繊細な味わいのコンフィチュールが押されていますね。コンフィチュール単体だと、複雑な風味が感じられるのに……。(桑原)

それぞれはすごく魅力的ですよね。全粒粉の食パンは皮がおいしくてナッツみたいな香りが後を引くし、黄金色したバターは力強くて生ハムなんかに合わせると、すごくおいしくなると思う。(池田)

パン_バター_コンフィチュール
(左から)〈王様のパン〉の全粒粉100%の食パン/北海道産小麦の全粒粉と天然酵母、塩のみを使用。セラミック製の焼き型で油も使わない徹底ぶりなので、アレルギーの人も安心だ。1本1,000円。公式サイト:http://osamapan.com
〈神津牧場〉の神津ジャージーバター/日本で最古の西洋式牧場。1889年から製造されるジャージー牛乳の発酵バターは、牛が青草をたっぷり食べる夏は金色に、冬は白銀に輝く。濃厚な風味がクセになる。225g缶入り1,700円。公式サイト:http://www.kouzubokujyo.or.jp
〈クリスティーヌ・フェルベール〉のマダムのジャム(オンライン取扱なし)/コンフィチュールの妖精と称される菓子職人が作る。アルザス産グリオットチェリーとローズ使用。220g2,376円。https://www.mistore.jp/shopping/brand/foods_b/001698.html

3人の気になるアイテムと
新たに試してみたい組み合わせ

桑原

これだけの数のアイテムを組み合わせて食べ比べるのは初めてだったので、あまりの違いに驚きました。組み合わせるのは楽しいけど、それぞれのベストを探すのは難しい。

梶田

私は、昔からトーストはステーキと同じだと思っていて。スライスから始まり、焼き方があって、どう味つけするか?まずは自分のお気に入りを見つけるところから始める。そうすれば、トーストを食べる毎日のなにげない楽しみが倍増する気がします。

池田

3つ同時に考えるよりは、1つ好きなものを見つけてそれをどうコーディネートするかを考えるといい気がする。僕が思うに、想像以上に個性が異なっていたバターから考えるのがいいんじゃないかな。ということで、すみません。もう一度試したいので、(3)と(7)のパンを焼いてもらえますか?

池田浩明さんの発見!

〈空と麦と〉の山形食パン、〈オーダーチーズ〉のバター・ドゥ・ロドルフ・ムニエ(有塩)、〈クリスティーヌ・フェルベール〉のマダムのジャム
すべての素材には個性があり、それを生かすのが作り手である職人の仕事だと思っています。今回そのことを最も強く感じたのが〈オーダーチーズ〉のバター。塩気も強いし、風味も濃厚だけど、尖った個性がないからどんな相手ともうまくやれる。合わせるのは同じく仏の職人が手がけた〈クリスティーヌ・フェルベール〉のコンフィチュールと、〈空と麦と〉のパン。〈空と麦と〉のパンの持つ素直な甘さと天然酵母の香りが合うんですよね。

梶田香織さんの発見!

〈そらいろのたね〉のジャージーミルク食パン、〈横市フロマージュ舎〉の横市バター、〈ロミ・ユニ コンフィチュール〉のジルベルト
組み合わせの大切さを再認識した試食会だったと思います。実際に食べてみないと、わからないことって多い。そんな中選んだのは、ミルキーな〈そらいろのたね〉のパンとミネラル感のある〈横市フロマージュ舎〉のバターの組み合わせ。一緒に食べると高級クロワッサンの味になるんです(笑)。このセットに酸味は合わないので、コンフィチュールは上品な甘さを持つ〈ロミ・ユニ コンフィチュール〉を。大人のトーストの出来上がりです。

桑原奈津子さんの発見!

〈空と麦と〉の山形食パン、〈サツラク農協〉のサツラク北海道手造りバター〈発酵〉、〈ミオジャム〉のジャムの王様
10の組み合わせの中で気に入ったのは〈サツラク農協〉と〈空と麦と〉の2セット。普段コンフィチュールはパンじゃなくて、ヨーグルトにかけたくなってしまいますが(笑)。〈ミオジャム〉のコンフィチュールは、アプリコットの酸味がパンによく合うのでエントリー。バターは食べ慣れたものを選んでしまいました。〈空と麦と〉のパンは、多加水のもちっとしつつもふわっと口溶けが良いところがお気に入りです。