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失われつつある日本文化"現代のストリップ"に迫る写真集

現代のストリップとは、踊り子の個性が爆発する総合芸術のようなもの。写真集を通じて、ストリップの魅力を発信するあいa.k.a.鈴香音色さんとグレート・ザ・歌舞伎町さんに話を聞いた。

Photo: Great the Kabukicho / Text&edit: Asuka Ochi

女性が脱ぐ悲壮感の時代は
とうに終わっています。

グレート・ザ・歌舞伎町

2018年、グラフィティライターのKANEに「ストリップで描くから撮りに来ませんか?」と言われて撮ったのが、あいちゃんとの出会い。

その時は1日4公演中の最後の回だけがグラフィティライターとの企画で、ほか3公演はあいちゃんの持ち演目だったんだけど、それも撮ってグラフィティとか関係なく、すごくクリエイティブなことをやってるなと思った。

あい

小さい頃から横浜の桜木町の高架下にあったグラフィティが好きで、描いた人に会いたいとずっと思っていました。そしたら20歳を越えた頃に偶然、本人たちとクラブで出会えたんですよ。リスペクトしているグラフィティやクラブミュージックを、大好きなストリップを通して広められたら素敵だなと考えていて、企画を立てたんです。

歌舞伎

KANEがブラックライトに反応する塗料で体と衣装にペイントしたり、TENGAoneが北斎の春画に着想を得て全身をキャンバスにしてタコを描いたり、グラフィティで活躍する5人に、自分で声をかけて企画したのもすごいよね。

ストリップとの出会いも横浜に

歌舞伎

そもそもストリップってもっといやらしいものだと思ってたんだけど、全然そんなことなくて。人を惹きつける魅力があると気づかせてくれたのがあいちゃんで、これをきちんと残しておけたらと、日本全国の公演を追いかけて撮り始めたんだよね。最初にこの世界と出会ったのは?

あい

桜木町のグラフィティと同じく、日ノ出町のストリップ劇場・浜劇(現・横浜ロック座)も近くにあって、小さい頃から気になっていたんです。だから18歳になってからすぐに行って、踊り子さんたちを見て「観音様だ」って、神々しくて衝撃を受けました。

その後は美大に進んで下着メーカーを目指していたんですが、いろいろあって中退して、有名になりたくてAV女優を経験したりしながらも、あの時に見たあの空間で踊れるならやってみたいと、ストリップの世界に入りました。

最初は年齢もあるし、と思って急いで飛び込んだけど年は全く関係なかった。

歌舞伎

むしろ若い子より、体の角度一つとっても、場を踏んでいる人の方が美しくて持っていかれるんだよね。

あい

やっぱり芸歴を重ねた人の方が、見せ方がすごいなと思いますね。浅草ロック座では、前半はストーリーやテーマを与えられて、後半は自分で振り付けをするんですけど、それ以外の劇場では、ただ脱ぐことだけをルールに、約17分の尺で衣装、音楽、構成も好きなようにやるんです。

歌舞伎

踊り子の個性が爆発する総合芸術。あいちゃんの場合は、グラフィティやヒップホップが身近にあったからこそ、ああいう企画もできた。

あい

アイドルが好きでJ−POPで踊る人もいるし、プロジェクターを使った面白い仕組みを考えたり、エアリアルをやったり、それぞれが工夫して自分ができることで魅了するんです。

昔は、もうストリップやるしか道がない……みたいな時代があって、そのイメージのまま止まっている人も多いですが、最近は性に素直な踊り子もたくさんいますし、女性や一見のお客さんも増えてきていますね。

歌舞伎

公演の内容も、能をベースにしていたり、そこにオリンピックのピクトグラムの時事ネタを取り入れたり、海外の文化とも全く違う、日本独自の進化をしているよね。それを今撮れているのは貴重なことだなと。昔は全国に300〜400軒くらいの劇場があったのが、もう18軒しか残っていないのは悲しいよね。

あい

ストリップって高収入なわけでもないから、そこで踊りたい愛がある人しかいないんです。踊り子が互いに切磋琢磨したり、伝統が途絶えないよう活動したりする一体感も好きで、文化を広めていきたい。歌舞伎さんは人物だけでなく、ステージの質感や空気感も捉えてくれるのが素晴らしいと思います。

写真を通して、ストリップを知らない人にも魅力を知ってもらいたいし、劇場は基本定休日もなく365日やっているので、ぜひ足を運んでみてほしいな。

浅草ロック座『秘すれば花』
浅草ロック座(2021年10月公演)『秘すれば花』にて。緊急事態宣言解除を受け、劇場内での酒の販売、持ち込み、飲酒も再開。