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カレー専門店じゃないけれど。あの店の名物〆カレー Vol.2〈焼肉ケニヤ〉etc.

カレーの専門店ではないけれど、旨いと評判のカレーがある店。最高の食材、極上のだし、専門分野の調味料を使い、研ぎ澄まされた技術で仕上げられた唯一無二の味は、看板メニューとして供されることも。食べずして帰れぬ味に、カレーの奥深さを感じずにはいられないのだ。

photo: Yoichiro Kikuchi, Shin-ichi Yokoyama, Hiromi Kurokawa / text: Haruka Koishihara, Koji Okano, Ayako Takahashi / edit: Haruka Koishihara

やきとん たつや(沼袋)

やきとんの名店のまかないが、
日本酒に合うカレーの煮込みに

店主の藤井龍成さんは、東京・野方のやきとんの名店〈秋元屋〉出身。芝浦から仕入れる新鮮なモツに串を打ち、轟音の換気扇の下、テンポよくやきとんを提供する。ダクト音と客の話し声が合わさる酒場のカオス感もこちらの名物だが、卓上をよく見ると、串ではなくカレーで日本酒をあおる人ばかり。

バゲット添えの洒脱さも、〈たつや〉らしからぬ雰囲気だ。これは藤井さんの〈秋元屋〉時代のまかないをもとに生まれた人気の皿。醤油ベースのモツ煮込みにルーを入れるため、麴×麴のマリアージュで、カレーが抜群に日本酒に合う。カシラやハラミなど日で部位が異なるのも一興だ。カレーで杯をあおり、バゲットで小休止を繰り返すうちに、〆の時間に。最終兵器に〈サトウのごはん〉を用意する、なんでもアリがグッとくるのだ。

jiubar(神楽坂)

もっと自由に、もっと楽しく!
新感覚の中華バル

看板もエレベーターもない、うっかり見過ごしてしまいそうなビルの階へ上がる。閉ざされた扉には店名と「〆のカレーあります」などと書かれた小さな貼り紙が。おそるおそる中へ入ると、モダンなホテルのバーのような空間が広がる。

名物の「肉団子」は誰もが知る料理だが、四川から取り寄せた青山椒や魚香の味つけで、ユニークでよりおいしいものに進化させている。〆の一番人気はカレー。粗く挽いた豚肉の食感が楽しく、トマトの爽やかな酸味でガッツリ食べた後でも不思議と入ってしまう。食べ進むごとに口の中に広がる四川唐辛子や山椒オイルのしびれが心地よくやみつきに!

東京〈jiubar〉中華屋のカレー
中華屋のカレー680円。名物の肉団子をイメージさせる粗挽き肉がたっぷりだが、意外やサラリと食べられる。カレーと合わせたいのは山椒を漬け込んだ自家製のジンで作る山椒ジンソーダ730円。
東京〈jiubar〉カレーを調理する様子
本場の豆板醤や唐辛子だけでなく、豊富な自家製調味料によって甘味、辛味、酸味を自由自在に操る。

焼肉ケニヤ(池尻大橋)

焼肉店のカレー=牛肉のイメージ
を裏切る、本気のチキンカレー

黒毛和牛A5ランクの極上肉もあれば、チュニジアスパイスで食する仔羊やサルサ・ヴェルデを添えた豚トロもあり、という多国籍なメニューがウリの焼肉店だけに、カレーだって一筋縄ではいかない。なんと、このためだけに鶏肉を仕入れて作るという南インド式のチキンカレーなのだ。

シナモンスティックは細かく刻んで使う、それとフェンネルやタマネギを“ゴールデンブラウン”色になるまで炒める、パウダースパイスはターメリックを最初に入れるなど細かなコツの集大成である逸品は、スパイスが織り成す爽やかな香りとシャープな辛さが心地よく、肉をたっぷり食べた後のお腹がすっと落ち着くかのよう。

東京〈焼肉ケニヤ〉南インドのおふくろの味カレー
南インドのおふくろの味カレー1,320円。以前店に勤めていたインド人スタッフ「ラミちゃん」がお母さんから習ったというカレーを忠実に再現。カレーに入っているザク切りのピーマンとライスに添えたパクチーが良いアクセント。
東京〈焼肉ケニヤ〉マサラ・ダバに収納されたスパイス
スパイスは、混ざらないように保存できる「マサラ・ダバ」に収納と、とことんインド式。

釀造科oryzae(錦糸町)

スパイスにだしの旨味を加えて
日本酒にも白飯にも合うカレーを

刺し身には醤油麴を添え、豚角煮にはザワークラウトを合わせる。発酵食品を駆使して、日本酒など醸造酒の肴を追求する店主・渡辺竜太郎さん。「燗酒を飲んだ時の喉のカーッとする感覚はスパイスの辛さにも通じます」。

料理に香辛料を用い、カレーを提供する理由だ。アラのだしで煮込んだ「魚と梅干のカレー」。日本酒に合わせると、飲み口にキレが増し、だしの旨味に杯も進む。またイワシの梅煮が白飯に合うように、魚と梅干しはおいしいを生む組み合わせ。バスマティライスも進むこと進むこと。ほかにも「焼ナスのすりながしカレー」など和食を絡めた展開がユニークだ。