スチャダラパーと、恩師・川勝正幸による「超時間余談」

50年も生きてると、この世を去ってしまった知人・友人がポツポツいたりするじゃない。そのたんびに、ああ、あの人が生きていればこれについてどう思っただろう、何て言っただろう、ここにいればよかったのになあって。
そんなの考えたところでしょうがないことだけど、つい思っちゃったりするよね。

この映画、好きだったろうなとか。

いまはこの女優に夢中かもとか。

それはつまり、僕らの恩師、編集者の川勝正幸さんのことなんだけど。

亡くなったのが……。

2012年1月31日。

さすがアニ。林家ペー並みに年月日が頭に入ってるからスッと出る。

没後10年経つんだね。

そう。だから、川勝さんがいなくなってからのこの10年はこんなだったよって伝えるとすれば、何を教えてあげたいか。それを今回は考えてみようと。

あの人が逮捕されて。

あの人が不倫して。

前略、川勝さん。いろんな人がいろんな事件を起こしました……って話じゃなくて（笑）。
ポップ中毒者こと川勝さんに伝えるんだから、もっとカルチャーな話をさあ……。

あ、カワカツですが。

わっ、出た〜っ

なんか呼ばれちゃった気がしたので、「ととのえて」参りました。

ととのえて⁉

それはもしや⁉

最近『サ道』にハマってるんですよ。今日もサウナと水風呂を3セット。水風呂はやっぱりシングルに限りますね。シビれる感じが、くぅ〜辛抱たまらん。

川勝節全開だ〜っ

いやはや。ご無沙汰しております。

いやもう、ちょーど「川勝さんに教えてあげたいことは何か」ってハナシをしてたところなんです。てか、サウナはそっちにもあるんですか？

サウナは天国ですから（笑）。「ととのう」って半分こっちの世界に足突っ込んでる状態のことなんですよ。

な〜るほど〜。

じゃあ、僕はまず、「昨年、オリンピックやってたみたいですよ、東京で」ってことを伝えたいです（笑）。

石原慎太郎がやったんですか？

あ、そっか。川勝さんの頃の都知事は慎太郎だ。猪瀬でもなかった。

猪瀬直樹が都知事に？

そっすよ。猪瀬がアレして、滝川クリステルがコレして、女帝・小池百合子がナニして、結果、パンデミックで『AKIRA』が現実になって……。

何言ってんのかわからんちん。

要はですね、川勝さん、生きてたらYouTubeやってました？っていう。

ユーチューバー川勝（笑）。

『TV Bros.』の連載コラムのYouTube版みたいな、ポップカルチャーを紹介する『川勝ちゃんねる』とか？

ブログがあんまり続かなかったからにゃー。でも、いま気になる映画やドラマや本や音楽を紹介しつつ、気になる人の話も聞くという、その昔、ライターの下井草秀君とやったトークイベント『ポップ寄席』ならばやったかも。

それいい。単純に観たい。『ポップウィルスちゃんねる』で。

でも、川勝さん言う？「よかったらチャンネル登録お願いします」

言わせていただきます（笑）。

そうだ、「ポップウィルス」といえば、星野源ちゃんでしょう。川勝さん、知ってます？この10年で源ちゃんは国民的ポップスターになって、川勝さんの意志を継いで『POP VIRUS』ってアルバムを出して、大ヒットして。

で、ガッキーと結婚しました。

ああ、舘ひろしと入れ替わる子？

そうそう、入れ替わる娘役の。あの頃ガッキーは女子高生だった（笑）。

しかし、10年ってあっという間のようで結構長くて。だって、僕が結婚して子供が生まれたことも知らないんだと思うと、ずいぶん経ったなって。

ボーちゃんが結婚！子供！

もう8歳になったんですよ。

てか、川勝さんは『あまちゃん』を観てないんですよね。宮藤（官九郎）君、NHKの朝ドラを書いたんですよ。

その後、『いだてん』って大河ドラマも書いてますから。

だから宮藤君はもう、山田太一先生的ポジションになってるんですよ。

にゃ、にゃ、にゃ〜んと

ちなみに『いだてん』は、大根（仁）さんも演出家として参加して。

なので「川勝チルドレン」はみんなナニゲに大御所になってます（笑）。

そうかあ。みんな頑張ってるんだ。

そうだ、チルドレン第1号のキョンキョン（小泉今日子）。小泉さんは自分の会社を作って、舞台や映画のプロデューサーとしても頑張ってますよ。

うわ、そうなんだ。それは面白い。

それに比べ我々は、相変わらず。

僕らただの「老害」ですよ。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』的な（笑）。てか、あの映画観た方がいい？どうすか、川勝さん。

知らないです。

あはははは。

あと、音楽シーンでは、川勝さん案件だったなっていうバンドはいっぱい出てきてますよ。例えば、令和版シティポップスのAwesome City Clubとか。

オーサム……？

え、アニ知らないの？年末の紅白にも出てたよ。青い髪したPORINちゃんってかわいい子もメンバーにいて。川勝さんがすげー追っかけそうな感じ。

わかる。サブカルおやじがハマるタイプの子だよネ（笑）。

あ、わかった、坂元裕二の『花束みたいな恋をした』に出てくる子だ。

そりゃ聞き捨てなりません（笑）。

ていうか、川勝さんは現在のシティポップリバイバルをどう感じているのか、何を思うかも知りたいっす。

僕は、自分の視座をズラしてくれるものが好きなので、2020年代の新しい解釈があるものなら好きなんです。昔のものをそのまま再現するのではなく、何か引っかかるもの、雑音のようなものがあるなら、聴きたいと思いますね。

しかし、川勝さんがせっせとまいた種が育ったから、シティポップブームになってるんじゃないかって気もして。

でも、はっぴいえんどから枝葉が伸びて、みたいな時系列は、いまの子たちにとってあんまり関係ないのかも。YouTubeができたことで全部並列になっちゃったから。

その並列になってる感じが、そもそも川勝さんの考え方だなって。

確かに。川勝さんの頭の中だ。

ちなみに、この10年の映画は、川勝さんが観るべき、原稿書くべき、パンフ作るべき、というのはたくさんありすぎて。どこから伝えていいのやら。

ここ2年ぐらいでも相当あるよ。クエンティン・タランティーノとか、エドガー・ライトとかさ。

クリストファー・ノーランとか。

スパイク・リーもあったりする。

なんだっけ、並行世界の話あったじゃん。流行ったやつ。……ラランドか。

って、それ芸人だから（笑）。

ウェス・アンダーソンの新作も今月公開されるらしいっすよ。すんごい長いタイトルのやつ。

あと、そう、ギレルモ・デル・トロとポン・ジュノは、アカデミー賞を獲って巨匠になりました。

『ほえる犬は嚙まない』の頃から川勝さんが絶賛してたポン・ジュノが。

てか、いまは、韓国のエンターテインメントがすごいんですよ。川勝さん、少女時代にハマってましたけど、いまはもうそれどころじゃなく。この話すると長いんですけど、BTSってアイドルグループが世界を席捲してましてね。

キョンキョンもハマってます。

ファンクラブにも入ったって。

小泉さんはもともと韓流ドラマ好きだったのが、去年ぐらいからBTS沼にハマり、新大久保にも行ってるらしい。

へ〜　そりゃすごいなあ。

あ、そうだ、サブスクは？

間に合ってないんですよ、それ。

そうか、サブスクが一般的になる前にいなくなっちゃったのか。いまはNetflixとかアマゾンとか、配信で映画やドラマを手軽に観られるんです。定額料金で見放題。音楽もそうだけど。

そりゃヤヴァい。いや、そうなるだろうというのはわかってましたけど。

てか、きっと、川勝さんは何から何までサブスクは全部入りますよね。

大忙しの日々ですにゃあ〜。

で、川勝さん。
僕ら、『余談』っていうインディーズ雑誌作ってるじゃないですか。1号目は川勝さんにも原稿を書いてもらったりしたけれど。

あれはスチャダラらしくていい雑誌。話はくだらないけれど、「余談の中にこそ本質がある」というテーマだから。

そうなんです。あれから11年。10号目まで出したんで、それをまとめて本にしようと。で、『大余談』という辞書みたいに分厚い本を作って。

おお〜。

そこで思ったのは、効率性や有用性が求められる中、やっぱ、僕らがやってることは真逆なんだなと。

なんてったってうちらの本、どうでもいいハナシばっかり640ページだもん。それだけでも笑えるけれど。

やっぱ、まとめられない部分に大事なものはあるからさ。

「ゴミの中に宝がある」んだよね。根本敬さんの名言だけれども。

結局、いろいろ掘ってもゴミしか出てこないのがほとんどだけど。

でも、宝が見つかる、かもしれない。だから僕らも、こういう余談の中にそういうタネを見つけて曲にしようと。それをいままでもやってきたし、これからもやり続けるしかないなと、改めて。

「でもやるんだよ」精神ですから。

ですよね〜。