インタビュー:〈Saunum〉CEO ヘンリ・リンダル
酸素量をコントロール。より良いサウナ環境を追求
Saunumの始まりは、20年前まで遡ります。実際に会社として立ち上がったのは、2014年の12月。もともと創業者アンドラス・ヴァレは、酸素不足や足元が冷えるなどのサウナ室内の環境に不満がありました。
例えばストーンに水をかけることによって出る蒸気は、実は酸素を抑え込んで室内を息苦しくし、酸素濃度を偏らせてしまいます。そこで熱そのものではなく、酸素量をコントロールすることでサウナ室内の温度の偏りを解決できるのではないかと閃(ひらめ)き、開発を始めました。
サウナで起こる問題を3つ挙げるとしたら、1つ目は酸素不足。2つ目はサウナ後の疲労感。3つ目は直接的な熱の刺激です。私たちはその中でも「酸素不足」という問題を解決するために、活動をスタートしました。ヴァレは「どうすれば、酸素をコントロールすることができるか?」という問いに対する研究を続ける中で「気流を生むことにより酸素不足を解消できそうだ」と気づきました。
Saunumの特許技術である空気循環システムは、サウナ室の天井付近の高温の空気を、ダクトとファンによって床面付近に送り、下部の比較的冷たい空気と混合させるものです。この循環によって、柔らかく酸素を多く含んだ空気が全体に広がり、サウナ室内であっても呼吸がしやすくなるわけです。また気流によってサウナ室全体の温度が均一に保たれるため、サウナ後の疲労感や熱の刺激といった問題も解消できます。
私たちは環境を作り出すというテクノロジーに絶大な誇りを持っています。20年前からチームで継続してきたことなのですが、私たちが本来立ち戻るべきところは、北欧諸国に古代から根づいていたスモークサウナの文化です。スモークサウナでは、煙突のない中で非常に均一な暖かさを享受できます。それを、電気サウナの技術で、どれだけスモークサウナの室環境へ近づけられるか、ということに注力しているのが、我々の会社の重要な部分です。
チームは30〜40人、販売や会社を運営する人も含まれますが、そのうち14人がエンジニア。現在サウナストーブのメーカーはたくさんありますが、より安く造ることばかりに注力しているような会社も多いのです。我々は技術を磨くことに一番こだわっています。
ラボではさまざまなセンサーを設置し、世界中の会社のストーブをテストしています。我々は、テスト専門家を雇うほど、R&D(Research&Development/技術開発)に力を入れています。このように研究しているサウナストーブメーカーは、まだ本当に少ないですね。ただ根拠なく主張しているわけではなく、技術的なバックグラウンド、計測に基づいて、より良いサウナ環境を追求しているのがSaunumの長所の一つです。
最後に大事なことを。これまで私たちがやってきたことは、北欧の昔ながらの文化を、現代的なやり方、ニーズに合わせて再現することでした。まずは、何トンもの巨大なストーブを、コンパクトな現代のストーブに変えた時に同じような環境を作ることができることです。
その次に、安全性の確保も必要です。昔ながらの快適さを、安全な形で現代に再現するというところに注力しています。目指すべき昔ながらの文化と安全性が結びついて、私たちの個性が生まれています。
皆、サウナは体に良いものだと言います。一方で、サウナ後に疲労を感じたり、熱で肌が焼けるような思いをしたりと、「本当は良いのか悪いのか」と懐疑的に思いながらも、スパやジムのサウナに通い続けている人もいますよね。私も、ここで働き始める前は同じような疑念を抱いていました。しかし、この会社で働く中で、酸素不足を解消することでサウナは快適なものになり得ることがわかりました。
私自身もコテージなどで体験したスモークサウナでの原体験を目指しています。人に「どこのサウナがいいの?」と聞かれた時は「ジムとかスパというよりはスモークサウナ、そしてSaunumのサウナだよ」と、答えています(笑)。これまでにたくさんのエストニア産のサウナをフィンランドへ販売しましたが、これからも増えていくことを願っています。