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深津さくらの実話怪異手帖:第二十五回「忘却」

怪談師・深津さくらが、自ら蒐集した実話の怪談を綴る。前回の「衝撃」を読む。

text: Sakura Fukatsu

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第二十五回「忘却」

深夜に運転するのには、やや寂しすぎる道だった。その日、3歳になる息子とともに千葉県の実家へ遊びに行っていたGさんは、午前0時過ぎに息子を車の後部座席に乗せて自宅への帰路を辿っていた。あたりはとても静かで、家はパラパラとしかなく、道の片面には雑木林が続いているばかりで、ほかの車は一台も走っていなかった。

「ねえ、あれなに?」。ふいに息子が声を発した。窓の外、上の方を指さしている。つられて見上げると、7、8メートルほど上空に巨大な船のようなものが浮いていた。黄色く光る窓が並んでいて、まるでSF映画に登場する母船のようだった。一切の音がしない。あまりにも異様な光景に混乱しながら、Gさんは咄嗟に思った。

すぐに逃げたほうがいい。さもなければ、車ごとどこかへ連れ去られてしまうかもしれない。

無言のままアクセルを踏み込んで、Gさんは猛然と車を走らせた。3キロほど先の赤信号にかかったとき、おそるおそる窓の外を確認すると、あの巨大な船の姿はもうどこにもなかった。ほっと胸を撫でおろしたGさんは、結局無事に自宅へ戻ることができた。そしてその後、この船に関する出来事のすべてを、25年間忘れていた。

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