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深津さくらの実話怪異手帖:第十七回「旅の出会い」

怪談師・深津さくらが、自ら蒐集した実話の怪談を綴る。前回の「予告」を読む。

text: Sakura Fukatsu

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第十七回「旅の出会い」

新潟県での怪談イベント出演を終えた夜だった。昔ながらの看板に惹かれて入った居酒屋で、常連客に温かく迎え入れてもらいながら「私いま、怪談の仕事をしながら、北陸から青森まで怪奇スポットを巡る旅をしてるんですよ」と言ってみた。

変なお姉さんだね、と笑った隣のお客さんが「東北に行くなら、僕の故郷である岩手県の宮古市にある寿司屋がおいしいよ。怪談とは全く関係ないけどね」と教えてくれた。毎日どこかしらの怪奇スポットへ赴く予定だったが、ただおいしい寿司を食べるだけの日があってもいいだろう。

実際、その寿司屋は絶品だった。「お客さん、どうして宮古に?」。カウンター越しに大将が言った。「実は私、怪談をしておりまして」。私が説明しようとすると「怪談?」と大将が目を見開いた。そして店の奥から大きなお菓子の缶を持ってきて「普段、他人には絶対に見せないんですがね」と蓋を開けた。中には夥(おびただ)しい数の写真が入っていた。

よく見せてもらうと、人物や景色をおさめたどの写真にも、絶妙におかしなところがある。「これ全部、心霊写真なんです。僕が写真を撮ると、それが写ってしまうんです」。そして、大将の怪談が始まった。

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