第十六回「予告」
A君は鋭い第六感の持ち主だった。「僕は2階より高い家には住まないんだ。高いところって幽霊がたくさんいるんだよ」。怪談好きだったYさんは、友人である彼の話によく耳を傾けていた。ある日、大学の講義室で顔を合わせたA君は、ひどく落ち込んでいる様子だった。
昨晩、仲間たちと麻雀を打ったのだという。そこでめったにできない役満のアガリをものにした。それだけならただのラッキーだが、集まった牌があまりにも不吉だった。難しい役満のなかでも特に奇跡のような確率でしか出現しない九蓮宝燈。
「アガったら死ぬ」といういわくつきの役だった。そして真夜中、彼は夢を見た。ぽっかりとなにもない場所で、見知らぬおばあさんが彼を待っている。「お前の命日は9月15日だよお」。そう遠くない日付だ。もしかして、自分は本当に死の運命を引き当ててしまったのではないか?
まるで余命宣告を受けたかのように、A君は日ごと弱々しくなっていった。しかし、9月15日は何事もなく過ぎていった。彼は胸を撫で下ろし、徐々に元気を取り戻していった。しかし、Yさんはあることがずっと気にかかっている。“何年の”9月15日なのか、言われていないのだ。